研究課題/領域番号 |
19K12874
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
富山 健一 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 薬物依存研究部, 科研費研究員 (20584064)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 合成カンナビノイド / 細胞毒性 / Rhabdomyosarcoma Cell / C2C12 / ヒト骨格筋細胞 / NG108-15 |
研究実績の概要 |
合成カンナビノイドは、大麻と類似の作用を示すと考えられており、我が国を始め諸外国において乱用が続いている。初年度の目標は、その副作用として、骨格筋細胞および運動ニューロンに対する合成カンナビノイドの毒性発現を明らかにすることである。骨格筋細胞としては、ヒト初代培養筋芽細胞、ヒト胎児横紋筋肉腫由来RD細胞、マウス由来C2C12細胞においてカンナビノイド受容体の発現を明らかにし、未分化状態及び筋管まで誘導した各種筋細胞において濃度依存的に合成カンナビノイドによる細胞毒性発現を明らかにした。特に、RD細胞においては、筋障害マーカーであるクレアチニンキナーゼの遊離や合成カンナビノイドによる細胞毒性誘発メカニズムとして、caspaseの活性化やミトコンドリア障害とそれらを誘発する細胞内カルシウム増加のメカニズムを明らかにした。本研究では、合成カンナビノイドがCB1受容体を介して骨格筋細胞を障害する恐れがあるという新しい知見が得られた。運動神経としては、モデル細胞であるNG108-15細胞を運動神経様細胞まで誘導し、合成カンナビノイドが濃度依存的に細胞毒性を誘発することを明らかにした。運動ニューロンに対する合成カンナビノイドの作用は不明な点が多いことから、今後さらに詳細に検討し細胞毒性発現メカニズムや神経機能の変化を明らかにする予定である。 また、合成カンナビノイドは、細胞毒性が発生しない低濃度で神経活動を調節すると考えられていることから、次年度以降の培養運動ニューロンと培養筋芽細胞との共培養モデルで検討可能な濃度範囲も本研究結果から設定可能であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨格筋細胞に対する合成カンナビノイドの毒性発現メカニズムとしてRD細胞を用いた詳細な検討結果を論文化し、現在投稿中である。運動ニューロンについては、初代培養神経細胞と培養細胞との比較が行えていないことから、ヒト由来の運動ニューロンの培養を行い、分化NG108-15細胞との比較検討を行う予定である。さらに細胞の活動電位を測定する微小電極アレイ(Multi-electrode array, MEA)法の予備検討も進んでおり、マウスLimbicエリアにおける初代培養神経細胞を用いて検討を行い、合成カンナビノイドによる神経活動の変化を解析している段階である。MEA基盤上での神経細胞の培養に関しては、その手法が確立しつるあることから、次の目標である培養運動ニューロンと培養筋芽細胞との共培養におけるMEA解析においても適用可能であると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
培養運動ニューロンと培養筋芽細胞との共培養よって、神経筋接合部位を形成する神経筋共培養モデルを微小電極アレイ(Multi-electrode array, MEA)基盤上で作製する。このモデルでは、神経支配による筋収縮に伴う筋繊維のみの活動電位を解析可能である。本研究期間では、本解析の要となる神経支配による骨格筋の制御を培養条件で再現するために、運動ニューロンと筋芽細胞のMEA基盤上での培養条件を確立し、MEA解析における培養条件ごとの活動電位パターンを解析し、適切な共培養条件を決定する。本研究に用いる運動ニューロンモデルとしては、培養神経芽細胞株から分化させる運動ニューロン様細胞のため、機能的運動ニューロンとして働くかは未知である。また、骨格筋モデルRD細胞やC2C12細胞も同様に神経支配による筋収縮活動電位が得られるか不明である。将来的には、培養維持が簡便な細胞株を用いた評価系の確立を目指すが、NG108-15細胞など培養細胞株がMEA上で機能しない場合、すでに培養方法が確立されているヒトiPS細胞由来機能的運動ニューロンや骨格筋細胞を利用することで解決をはかる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
iPS細胞から筋芽細胞への効率的な分化誘導を可能とするプラスミドを作製する予定であったが、2019年2-3月における社会的状況から判断して発注を一時停止したため。本プラスミドは、すでに設計済みであることから次年度に改めて作製する。
|