大麻と類似の作用を持つ合成カンナビノイドの乱用によって意識障害や痙攣または横紋筋融解症のような重篤な健康被害が報告されている。合成カンナビノイドは、無数の類縁体が存在し、中枢神経系に発現するCB1受容体が精神作用の発現に関与している。本研究課題では、合成カンナビノイドによる細胞毒性発現と痙攣発症機序を明らかにするために、NG108-15細胞株(マウス神経芽細胞腫×ラットグリア細胞腫ハイブリッド)、マウス由来C2C12筋芽細胞株、RD (Human rhabdomyosarcoma)細胞およびそれらを組み合わせた神経筋共培養モデルの作成を試みた。NG108-15細胞株、C2C12筋芽細胞株およびRD細胞株は、それぞれ合成カンナビノイドの添加によって濃度依存的に細胞毒性を発現し、アポトーシスによる細胞死が引き起こされた。その毒性発現はCB1受容体をブロックすることで抑制されることも明らかとなった。Differentiated NG108-15 (motor neuron-like)、differentiated C2C12およびdifferentiated RDを組み合わせた神経筋共培養モデルの作成を試みたが、神経支配による骨格筋活動電位の発現には至らなかった。特に、differentiated C2C12およびRD細胞はMEA基盤上での維持が難しく、培養のためのコーティングや培養培地の検討など問題点を整理し、引き続き、神経筋共培養モデルの構築を行う。一方で、合成カンナビノイドのように、無数の類縁化合物が存在する薬物を動物で個別に評価することは困難であり、本研究課題の目的である培養細胞を用いたスクリーニング法の確立は有害作用の予測を行う上で大変意義がある。特に横紋筋融解症のような、重度の障害発症の予測については、動物愛護の観点からも培養細胞での実施が期待される。
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