研究実績の概要 |
本研究では、強度と勾配を統制した磁場環境の下で実験を行うことで、造骨細胞系の磁場影響についてこれら二要素の整理を目的とする。2022年度は、2021年度と磁界ばく露条件と培養期間を変え下記の磁場条件での細胞の培養を実施した。 非磁性化したCO2インキュベーター内のSmCo磁石上に24 well plate上にてMC3T3細胞を21日間培養した。培養にはa-MEMにAscorbic acid、Hydrocortisone、b-glycerophosphateを添加した分化誘導培地を用いた。培養細胞におけるばく露磁束密度は75-239 mT、磁気力は0.95-4.75 T^2/mであった。細胞はばく露群、sham群(磁界ばく露なし、分化誘導あり)、コントロール群(磁界ばく露なし、分化誘導なし)、培養14日目に1度目の培地のサンプリングを行い、21日目に2度目のサンプリングとCell counting kit-8を用いて細胞増殖を吸光度法により測定した。その結果、磁界ばく露群はsham群に対し細胞増殖で差は検出されなかった。しかしながら、14日目時点において、骨芽細胞の分化後期のマーカーであるオステオカルシンの培地中発現量は磁界ばく露群で有意に抑制されており(51.1% v,s sham群、ANOVA、Bonferroni test)、かつその効果は磁束密度依存的に抑制されていた(Pearsonの相関係数)。一方で磁気力との相関は観察されなかった。また、抑制効果は21日目には観察されなかった。分化初期のマーカーであるアルカリフォスファターゼの酵素活性はsham群との差は観察されず、磁束密度、磁気力いずれにおいても相関は観察されなかった。このことから、磁界ばく露群では磁束密度依存的に分化抑制作用が一時的に観察されることが明らかとなった。
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