研究課題/領域番号 |
19K12893
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
近藤 知子 杏林大学, 保健学部, 教授 (90274084)
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研究分担者 |
澤田 有希 帝京科学大学, 医療科学部, 助教 (40747995)
硯川 潤 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究室長 (50571577)
原田 祐輔 杏林大学, 保健学部, 助教 (60611001)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人間工学 / リハビリテーション科学・福祉工学 / 福祉用具・支援機器 / 健康・福祉工学 / 作業療法学 |
研究実績の概要 |
本研究は、医療従事者が、必要に応じ3Dプリント自助具の設計・製作が可能となるような教育プログラムを開発することを目的とするものである。今年度は下記を行なった。 ①文献調査:過去10年の日本作業療法学会の抄録を調べ、3Dプリント自助具は、複数個同形のものが必要なもの、頻回の洗浄に耐え衛生が保持できるもの、市販品に取り付けて使うものなどが利活用の範疇となり得ることが想定することができた。 ②自助具作成に関わる現場の視察と関係者へのヒアリング: (ア)3Dプリンタ本体販売企業:デザインしたものをすぐに確認できる、対象者の身体や姿勢に合わせ素早く細かくモデリングが可能という利点、3DCADデータに関する知識が不可欠である、後処理作業があるなどの欠点が説明された。(イ)ファブラボ:訪れた人が価格を気にせず、自分が作りたいと思う福祉用具を作成していた。福祉用具作成には、自分のために自分に適したものを得るという利用者側の意識も重要であることが示唆された。(ウ)ボランティアによる自助具作成団体:工学的知識背景のある退職者が、様々な自助具づくりを行っていた。数多く依頼があるのは、スプーンやパズルなど出会った。作成にあたっては、物作りの知識だけでなく、対象者のニーズを汲み取ること、心身機能・疾患や機能の予後の知識知識が必要であるとしていた。 ③3Dプリント自助具の使用状況:国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局で32名、45点の3Dプリント自助具の使用開始1ヶ月後と退院時にける使用状況と満足度を調べた。自助具は使用頻度が高いにも関わらず、比較的長期にわたって使用しされ、かつ、手作りした同様の自助具と同程度の満足度も得ていた。 ④暫定的教育プログラム: 90分×2回の教育プログラムを作成した。26名の作業療法養成校の学生が受講した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、自助具に関わる文献研究、視察、関連者および当事者への調査などを通した実態調査、暫定的教育プログラムの作成と実施を行った。文献研究および実態調査では、3Dプリント自助具の利点として、利用者や身体つきや姿勢に合わせた個別性に対応できる、完成までの時間が非確定短い、物によって安価である、作り直しなどの試行錯誤が可能である、手作り自助具と同程度の満足度が得られるなどが明らかになった。 また、3Dプリン自助具は、衛生維持のため頻回に洗浄される、同形のものが複数個必要になる、形の決まった市販品に取り付けらるなどの条件下では、より利活用される可能性があることが示唆された。例としては、マウススティック、スプーンやフォーク、トランプカードホルダーやパズル、充電用機器やリモコンホルダーなどがある。 さらに、3Dプリント自助具作成の教育プログラムには、3DCADデータに関する知識、後処理の方法についての知識、利用者の形状として客観的に現れることのない疾患・心身機能・予後などの知識が必要なこと、自助具使用者が福祉用具の作成や活用に積極的に参加するという意識づけ等が重要であることが見出された。 年度内に、作業療法士を中心に自助具作成関連施設への視察および面接調査を行い、3Dプリント自助具の適応範囲および教育に不可欠な点な項目をさらに同定する予定であったが、COVID-19 の影響のため、視察および面接調査を実施することができなかった。COVPD-19の影響が治り次第、面接インタビューを再開する。あるいは、オンラインインタビューへと切り替える。
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今後の研究の推進方策 |
①3Dプリント自助具の利活用範囲の更なる明確化(文献調査・視察・インタビュー調査):文献調査として、作業療法士以外の関連職種の過去の自助具の作成状況および3D自助具に関わる報告について調べる。また、手作り自助具を行う専門職のいる施設を訪ねて自助具作成に関わる機器の視察(動画・写真を含む)をするとともに、面接(オンラインを含む)インタビューを実施する。これにより、3Dプリント自助具の利活用範囲をさらに明らかにし、具体的な設計ツールへと結びつける。 ②設計支援ツールの作成:3Dプリント自助具の利活用範囲から導き出された自助具を工学的観点から分析し,i-iv)の段階を経て形状テンプレートおよび設計フローチャートを作成する.i)各用具の形状を機能が損なわれない程度に単純化しの形状を機能が損なわれない程度に単純化し,その作成に必要なCAD ソフトウェア機能を特定する.ii)これを全収集事例にわたって集計し,3Dプリント自助具の形状データ作成に必要なCAD ソフトウェア機能の最低限の範囲を明らかにする.iii)同時に,用具の全体形状を数個の形状要素に分割し,各要素が果たす機能をもとに分類する.iv)同一機能を持つ形状要素の共通したおおよその形を,形状テンプレートとしてデータ化し,組み合わせ設計に必要な工学的知識・技術を特定する.データ化された形状テンプレートと特定された工学的知識・技術を,作業効率や難易度の視点から評価,分類,手順化し,設計フローチャートを作成する. ③教育プログラムの洗練と受講者アンケート:上記の①、②を参照に、教育プログラムを改変する。プログラムは受講者を拡げて実施し、教育の前後にアンケート調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、予定していた3Dプリンタの購入ができなかった。また、視察・インタビュー調査、学会参加などもできなかった。物品費については、教育プログラム実施に向けて3Dプリンタ入および作成する3Dプリント自助具の素材の購入に充てる。旅費支出については、更なる視察、インタビュー調査を予定している。視察・インタビュー調査ができない場合には、利用者へのオンライン機器の貸与等も含め、オンライン環境の構築に充てる。その他の支出は、面接データの逐語録作成、教育プログラムの教材印刷費等に充てる予定である。
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