研究課題/領域番号 |
19K12894
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
佐野 睦夫 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (30351464)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グループ就労行動分析評価 / 認知障害モデル化 / 認知コミュニケーション障害 / 協調行動ナビゲーション / 適応能力ナビゲーション / 行動認識 / コミュニケーション行動認識 / 自己認識促進 |
研究実績の概要 |
グループ就労行動では,オフィスでのグループ作業や厨房や店内でのサービス作業においても,合意形成をどのように構成するかが重要となる.具体的には,目線,顔の向き,表情,うなずき,発話内容を計測し,合意形成が行われた際に,実験参加者はどのような行動をとっていたのかについて,1)ノンバーバルコミュニケーションの種類によって合意形成に与える影響が違うのではないか,2)ポジティブな合意形成か,ネガティブな合意形成かによって影響を与えるノンバーバルコミュニケーションが違うのではないかの2つの観点から,コンセンサスゲーム実験を通して分析を行い,合意形成のプロセスをベイジアンネットワークに基づきモデル化した.同時に,ポジティブな発話かネガティブな発話かを目的関数とし,目線,聞き手の顔向き,話し手の顔向き,表情を説明変数とし,感度分析を行った.ポジティブな合意形成がされやすい要因の組み合わせは,目線が合っており,聞き手と話し手の顔が向き合った状態で,聞き手と話し手に表情の変化が見られなかった場合であった.一方,ポジティブな合意形成がされにくい要因の組み合わせは,目線が合わずに,聞き手と話し手が相手の方を向いておらず,表情に変化があったときであった.逆に,ネガティブな合意形成をする場合,笑顔のような表情の変化があることが合意形成を成すために重要であることも導き出された. また,社会的スキルが低い対象者のコミュニケーション行動特性として,話し手の際には聞き手のことより自分のテンポを優先し,聞き手の際には,アイコンタクトをとらない傾向にあることを,グループコミュニケーション実験を通して明らかにした.同時に,顔向きなどの定量的な状態量もセンシングできることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
認知コミュニケーション障害のモデル化と就労行動の分析・評価方式については,まず,健常者の社会的スキルの違いによるコミュニケーション分析・評価を優先して実施し,コンセンサスゲーム実験を通して,ノンバーバル行動の観点から合意形成プロセスにおける振る舞いを因果関係ネットワークモデル(ベイジアンネットワーク)の中で明らかにした.行動履歴から認知障害の振る舞いを同定・分析するための評価・理解ネットワークとなっている. また,就労タスク行動のモデル化については,職業リハビリテーション施設との話し合いの中で,清掃業務での協調行動や,オフィスでの調整作業など,協調行動の類別化をすると同時に,倫理委員会へ付議する実験計画を立案中で,リハビリテーション実験への着手は多少遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
現在,職業リハビリテーション施設側の共同研究メンバーが明確になり,研究対象とする障害類別や就労タスク,評価方法についてオンライン会議での議論が進んできており,倫理委員会に付議する実験計画書を作成中である. また,研究開発メンバーとして,注意障害などの認知障害の行動認識・理解が専門の立命館大学理工学部大井翔先生に研究協力者として参加していただき,認知コミュニケーションの行動理解や評価方式について議論をしており,研究を加速させたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
就労行動分析・評価装置および協調行動ナビゲーション支援システムとしてPCを2台とナビゲーション開発用タブレットを1台購入予定であったが,GPU性能がより高いPCおよび,処理性能の高いタブレットの発売を待っており,令和2年度早期に購入予定である.
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