研究課題/領域番号 |
19K12894
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
佐野 睦夫 大阪工業大学, 情報科学部, 特任教授 (30351464)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 認知リハビリテーション / コミュニケーション障がい / 行動認識 / 行動評価 / パターン認識 / VRリハビリテーション |
研究実績の概要 |
新しい就労環境下での行動をシミュレートすることにより,問題の発生を未然に防ぐことができるリハビリ学習を介して,コミュニケーション障がい者の適応能力を向上させる支援システム構成法を解明するために,1)「グループ」での就労場面を想定し,VR空間において,コミュニケーション行動をシミュレートし,コミュニケーションの適応能力を向上させるためのトレーニングシステムの検討を進めた.さらに,コミュニケーション障がい者の観察結果から,2)「声掛けなど,相手に対する気づきの誘発行動」や「共感の誘発行動」,「援助行動」が発現しにくいことに着目し,これらのコミュニケーション行動の構成要素を明らかにするために,ファシリテーションロボットを開発し,声掛けや共感,援助行動を起こすパターンやタイミングの分析を行った.それぞれ,どちらも,実験参加者は,健常者として実験を進めた.具体的には, 1)複数のクライアントとの取引場面をVR空間で構成し,アイコンタクトや視線配分,頷きなどのノンバーバル行動および,相手の意図を推察しながら対等なコミュニケーションを遂行する「アサーティブコミュニケーション」の評価を自動で行うシステムを構築した.同時に,アドバイスを行う振り返り支援システムも開発した.結果として,振り返りにおいて気づきを誘発させることができた. 2)複数人でのオンラインお絵描きチャットに対して,手元の動きや表情,対話内容のセンシングデータから,困っているときの声掛け行動や雰囲気をよくするための共感行動を生成するファシリテーションロボットの開発を行った.ただし,ロボットからのフィードバックはWoZで行い,センシングデータは集約して,場の雰囲気を見える化した.特に,具体的に褒める行動が,笑顔の発現などの活性度を向上させる契機になること(優位傾向あり),声掛けは,タイミングが重要であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度も,コロナ禍の中で,一緒に進めているリハビリテーションセンターにおけるリアルなグループ就労リハビリ実験が困難な状況は続いており,打開するために,2020年度に引き続き,VR空間で就労リハビリの行動分析・行動評価を自動的に行い,気づきの促進を介して協調行動力を向上させる支援システムの開発,および,VR空間で,新しい就労環境下での行動をシミュレートすることにより,問題の発生を未然に防ぎ,適応能力を向上させる支援システムの開発を行った.具体的には,VR空間において,ルールベースで動作する複数のNPC(ノンプレーヤキャラクタ)を開発し,行動特性を自由に設定できるようにした.これにより,グループ就労リハビリ環境がシミュレーション可能となる.また,コミュニケーション行動評価もVR空間における行動履歴や会話履歴から自動で行えるようにした.2022年度は,構築したVRリハビリテーション支援システムを用いて,リハビリセンターのカリキュラムとしてセンター職員の立ち合いのもとで,当初予定していたコミュニケ―ション障がい者に対する就労リハビリトレーニングを進め,有効性を検証していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
前述のように,構築したVRリハビリテーション支援システムを用いて,当初予定していたコミュニケ―ション障がい者に対する就労リハビリトレーニングを8月ぐらいから進めるとともに,並行して,現在構築している,「オフィスでの上司と部下との日常的なインタラクション場面」と「ビジネスの取引場面」でのリハビリ支援システムに加えて,「日常的なグループワーク場面」も可能なようにする.同時に,複数の実験参加者がVR空間に参加できるようなシステムを拡張する.さらに,「声掛けなど,相手に対する気づきの誘発行動」や「共感の誘発行動」,「援助行動」などに対する評価機能を追加し,認知リハビリテーションとしての充実を図り,研究を加速させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が見通せず,リアル環境でのグループ就労リハビリ実験は困難となっており,2020年度後半から,VR空間での就労リハビリ支援システムの開発へと切り替え,2021年度は,そのシステム開発を本格化させたが,コミュニケーション障がい者に対するVR検証実験は,コロナ禍でもあり,実施できず,制御PCは購入したが,他の実験機材はスペックを確定できず購入できなかった.2022年度はシステム開発の改良を行うと同時に,コミュニケーション障がい者に対するVR就労リハビリを推進していく予定でり,それに必要な実験機材を残額で賄う予定である.
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