最終年度では,今までに開発してきたアサーティブVR認知コミュニケーション支援システムを活用することにより,業務で追われている最中に追加オーダーが要求されたオフィスでの葛藤場面を想定し,どのようにアサーティブな対応ができるかどうかに関する行動評価を行い,振り返りを行うことで葛藤場面のメタ認知能力を向上させることを検証した(研究会論文2件).期間全体の総括としては,対人関係が苦手な人を含むグループ行動履歴から分析・評価を自動的に行うことにより,気づきを促進し協調行動力を向上させる支援システムの構成法を明らかにした.同時に,新しい環境での行動をVR空間でシミュレートすることにより,問題の発生を未然に防ぐための適応能力を向上させる支援システムの構成要素を明らかにし,実証実験を通してその有効性を検証した.具体的には,グループ対話における社会的スキルと非言語コミュニケーションとの関係を明らかにし,非言語コミュニケーションがグループ対話の合意形成に与える影響を分析し,就労環境で起こりえる上下関係や対立関係での葛藤場面の合意形成において,相手の立場を尊重しつつ自己を主張するVRアサーティブ・コミュニケーション方式に基づく支援システムを提案した.この提案方式を,職業リハビリテーションで生じる,上司・部下との1対1での葛藤,複数のクライアントとの営業場面での葛藤,オフィス内でのチームでの葛藤をシミュレートし,行動評価を行い,振り返りを行うことで,葛藤場面のメタ認知能力を向上させる可能性があることを明らかにした.コロナ禍で実際のコミュニケーション障害者に対しては実験ができなかったが,職業リハビリテーションセンタとの継続的な打ち合わせを通してVR認知コミュニケーション支援システムの構成要件を明らかにし,協調行動力や適応能力向上を図る可能性があることを示した.
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