研究課題/領域番号 |
19K12898
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村田 尚道 岡山大学, 歯学部, 客員研究員 (10407546)
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研究分担者 |
五福 明夫 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 教授 (20170475)
山本 昌直 岡山大学, 大学病院, 助教 (60712859)
江草 正彦 岡山大学, 大学病院, 教授 (90243485)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 摂食嚥下機能 / 支援システム / 嚥下障害 / 嚥下評価 |
研究実績の概要 |
【目的】申請者らが作成した嚥下機能の評価・支援システムは、嚥下時に挙上する喉頭の動きを評価したり、その動きを支援することが可能なシステムである。これまでのシステムでは、個人差があり複雑な形状である喉頭を確実に把持することは困難なため、使用できる対象者が限られていた。そのため、昨年度に喉頭隆起の形態に影響されないよう、ジャミング転移現象を応用した剛性可変グリッパを用いた可変支持部を作製した。今年度は、可変支持部を備えたシステム(以下、改良支援システム)の挙動について検討した。 【方法】対象は、嚥下機能に問題のない成人男性(ボランティア)5名(平均23歳)である。剛性可変グリッパは、ニトリルゴムの中に直径0.5mmの発泡ポリスチレンビーズを充填率が90%以上となるように充填させた。改良支援システムの挙動条件は、対象者の喉頭隆起部を剛性可変可変グリッパに当てた状態で真空ポンプを作動させて把持し、嚥下と同時に支持部を挙上させ、挙上した喉頭隆起を上方で5秒間保持させた。喉頭隆起の保持に必要な挙動条件については、挙動時の保持力および移動距離を過去のシステム挙動時のものと比較した。 【結果および考察】改良支援システムにおける保持力は、平均9~11Nを示した。支持部の移動距離は、約30mmであった。本結果は、過去の支援システムの挙動時とほぼ同様であった。過去の報告(16K)より、喉頭および舌骨を上方で保持するメンデルソン手技を補助できると考えられた。第25回大会の報告において、ジャミング転移現象を用いることで喉頭隆起が小さくても把持が可能であることから、男女問わずに応用することが可能と推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、模擬装置(喉頭を模した模型を使用した装置)上では、剛性可変グリッパの形状を変形させても安定して保持可能であったが、健常ボランティアに応用した時には、新支持部の保持力が安定せず、保持部の形態修正の必要性が生じた。 改良した支持部を用いた本研究で、健常ボランティアを対象に改良支援システムの挙動が確認できたので、おおむね進展ができたと考えられた。 予定では、高齢者ボランティアを対象に改良システムの挙動確認を行いたかったが、covid19のためボランティア募集ができずにいる。来年度も、ボランティア募集については難しいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
【目的】 高齢化率は、日本では26%を超えており、今後も上昇していく。世界的にも高齢化率は増加しており、特にアジアでは今後急速に超高齢社会へと変化 していくことが予測されている。日本では、高齢者の約2割が要介護状態であり、その割合は大きく変化しない。そのため、医療・介護の資源が不足することは 容易に推測できる。そのため、病院から地域へと医療と生活の場が移行できる地域包括ケアのシステム作りが進められている。日常生活において、摂食嚥下障害 (以下、嚥下障害)は、誤嚥や窒息などの生命リスクの増大、低栄養や脱水状態などの健康面を大きく害することにつながる。嚥下障害を早期発見・予防するこ とによる健康な食生活の維持は、健康長寿社会の実現のために必要である。本研究は、嚥下障害が重症化する前に簡便に機能低下を判定できること、日常的なリ ハビリが介助者の負担とならずに実施できる訓練システムの開発を目的としている。 今後は、改良支援システムの効果について、高齢者を対象に実施する予定であるが、ボランティア募集が困難なため、システム挙動の確認および健常成人の対象者での支援効果について検討を予定する。 【方法】健常ボランティアに対して、改良支援システムを用いた喉頭保持および挙上支援を嚥下造影検査と同様の方法で撮影し、実際の甲状軟骨及び舌骨の挙上距離を測定 する。また、挙上距離の測定を支援システムで行い、嚥下造影検査上での挙上距離との差についても検証する。 健常ボランティアの募集について、高齢者(65歳以上)の募集が難しい場合は、成人男性・女性を対象として上記方法にて改良支援システムの検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国内学会の開催が行われなかったため、旅費の使用がなかった。来年度に報告を行う予定であるが、オンライン開催となる可能性があるため、発表者および共同研究者にオンライン環境の整備を行う予定である。
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