最終年度は前年度までに性能の評価を終えた改良版の粘弾性負荷を課せる舌操作ジョイスティックシステムを利用した舌運動トレーニングを行った。トレーニングによる舌機能の効果向上に加え、課題として挙げられていた上体姿勢維持の負担軽減、および、よりゲーム性の高いトレーニング課題(ブロック落とし)を取り入れたことによるモチベ―ション維持効果についても検証した。 ブロック落としは、舌の左右のジョイスティック操作に追従するハンマーでPC画面上のブロックを崩していくものであり、一定時間内で崩したブロック数を競う課題である。トレーニング継続により、舌の左右運動速度と力出力の向上を確認した。また、最適な運動振幅を学習により獲得する過程も観察でき、運動の巧緻性向上も確認できた。さらに、口腔機能の評価方法であるオーラルディアドコキネシス(パ、タ、カの短時間当たりの発音回数)によっても舌の機能改善が確認できた。被験者への聞き取りから姿勢負担の軽減、モチベーションの維持も向上したことが確認された。 本研究の目的は、舌の運動に対して粘弾性負荷を課すことで舌の力覚と運動機能の維持・強化を実現することである。特に粘性負荷は、舌の運動速度に比例した抵抗力であるため、個人の能力や体調に応じて適切に速度を調節することで安全に設定した範囲での舌運動を実施することが可能である。また、粘弾性負荷を課した舌用ジョイスティックによるゲームをトレーニングとすることによるモチベーション維持も目的とした。ジョイスティック操作の解析から、舌の可動域、力出力の向上が確認でき、提案手法の有効性が確認できた。さらに、舌の巧みな運動、姿勢制御の特徴も明らかにすることができ、本来の舌の機能改善という目的に加え、舌の機能評価装置や舌を利用した新たなインターフェイスの開発に寄与するものと考える。
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