研究課題/領域番号 |
19K12903
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
苗村 潔 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (90302752)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 流速 / 超音波 / 血管モデル / コンプライアンス |
研究実績の概要 |
血液透析患者のシャント血管に狭窄が生じていないかを触診、聴診だけによらずに、血流速を計測するための技術開発を研究目的とした。今年度は、シャント血管のモデルを開発し、流速の自動計測に向けて超音波ドプラ血流計を押し当てる力の影響を調べた。 シャント血管のモデルとして、狭窄の無いモデルと狭窄率75%のモデルを製作した。血管モデルの直径は文献をもとに5mmとし、狭窄部は直径1.25mm、長さ30mmとなるように、3次元プリンターで製作した。血管モデルの周辺には生体組織と音響学的特性が近いゲルで覆った。簡易型脈動流ポンプを使って、血液と音響特性を近似させたドプラ―液を循環させた。新規に製作した血管モデルのコンプライアンス(圧力-容積特性)は石灰化した血管なみの硬度であった。一方、穿刺練習用ファントムのコンプライアンスは0.004mL/mmHgであった。これらの2種類の血管モデルを用いて、次の評価実験を行なった。 超音波ドプラ血流計のプローブ(12mm×20mm、厚さ6mm)をロードセルに接続し、2軸の自動ステージを使って、自動検査装置の実験機を製作した。血管モデルに1分間に60心拍のペースで拍動流を循環させ、プローブを押し当てる力の影響を調べた。 実験の結果、回路を流れる流量から算出した平均流速30cm/sに対して、4Nで押し当てると15.7cm/s、1Nでは8.0cm/sと自動検査装置開発において、プローブを押し当てる力制御が重要であることが示された。また、狭窄部では4倍以上の高速流が計測され、診断の補助手段としての有用性を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自動検査装置開発のための基礎実験を行なう機器整備が終了し、今後は血管モデルの改良と、超音波ドプラ流速計の臨床評価に進めていけるため。
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今後の研究の推進方策 |
実験に使用した超音波ドプラ流速計で、透析患者に対して有用な情報が得られるかを、関東労災病院の協力のもと計測して評価する。さらに、シャント血管の走行パターンの把握と、血管モデルの改良にも応用していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表の学会がオンライン開催であったことと、論文作成の途中で投稿に至らなかったため。次年度は対面開催の学会での成果発表に20万円、論文投稿料10万円、改良型の血管モデル製作料20万円、シャント血管の立体撮影機器およびソフトウェア80万円、流速計プローブをあてる力を制御する自動計測装置の試作に50万円を予定している。
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