研究課題/領域番号 |
19K12906
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研究機関 | 東京工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山下 晃弘 東京工業高等専門学校, 情報工学科, 准教授 (80589838)
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研究分担者 |
松林 勝志 東京工業高等専門学校, 情報工学科, 教授 (80239061)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 視覚障害者支援 / 高精度位置測位 / RTK-GNSS / 画像認識 |
研究実績の概要 |
本研究では,RTK-GNSSに基づく超高精度位置測位や画像認識技術に基づく視覚障害者支援システムについて研究開発を実施している.2019年度に引き続き,(A)RTK-GNSS技術とスマートフォン内蔵センサに基づく超高精度位置測位技術の検証,(B)視覚障害者とのコミュニケーションを円滑にするためのインタフェースに関する研究,および(C)音声データや点字データのみで視覚障害者をサポートするためのインタフェースに関する検討を行った. (A)については,RTK-GNSSのデータを教師データとするニューラルネットワークを構築し,加速度センサやジャイロセンサなどのスマートフォン内臓センサに基づくデッドレコニングを用いた高精度な速度と方向の推定手法に関する研究を進め,国内での学会発表を行った.(B)については,印刷物や周囲の状況を撮影した画像データから,視覚障害者が必要とする情報を抽出し,音声や点字等の情報に翻訳して伝える技術の開発を継続している.特に単純な文字列だけではない情報の中からいかに重要な部分を抽出して視覚障害者に提示するかについて検討を行っており,画像データの中に含まれる様々な情報に対して優先度を設定する方法の開発を行っている.(C)については,NPO団体が提供する視覚障害者のための道案内音声スクリプトを分析し,視覚障害者を道案内する際に必要となる情報が,健常者向けのアプリケーションとはどのように異なるかについて検討を行い,視覚障害者を道案内するためのデータ構造や地図情報の構成方法について研究を行った. 2020年度の成果としては,国内学会での口頭発表1件を行ったほか、海外ジャーナルとして2件の論文が採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,当初の計画通りおおむね順調に進展している. 2020年度は,これまでの研究成果をまとめ,2件の論文が海外ジャーナルに採録されるなど順調に研究成果が積み上げられていると考えている.しかしながら新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い,実際に視覚障害者の方にお会いし,ヒアリングしたり実証実験を行う機会が大幅に減っており,研究成果を評価する方法は今後引き続き検討していかなければならない.また,これまで毎年障害者福祉のための機器展示会などにも出展していたが,そのような展示会も中止またはオンライン開催となり,視覚障害者当事者の方から直接意見をうかがう機会が減っている.2021年度に向けてはオンラインでのミーティング等の開催も積極的に計画し,今後も引き続き研究を進展させていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
視覚障害者の位置を高精度に把握する技術については,これまで様々な実験を積み重ねてきた.多くの環境で視覚障害者の案内に必要な測位精度が達成できることが明らかとなっているものの,屋内環境などGPSを使用できない環境で測位精度が低下するなどの課題は残るため,例えばBLEビーコンやカメラ画像に基づく測位方法等,先行研究の成果を活用したハイブリッド法についても検討を進める必要がある.また,位置を推定するだけではなく,周囲の状況を適切に把握し,文字情報なども読み取りながら適応的に視覚障害者をサポートする方法の開発が重要となっている.そのためには,カメラ等から得られた画像を要素に分割し,視覚障害者に与える情報の重要性に基づいて優先度を設定する方法の検討や,優先度が設定できた場合にそれをどのように音声データや点字データに変換して伝えるべきか,といった観点での研究開発が必要である.2021年度以降も引き続き視覚障害者のニーズ調査を行いつつ,技術開発と同時にフィージビリティスタディも行いながら,研究開発を進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い,学会や実証実験等の出張の機会が減ったため当該助成金が発生している.次年度以降状況が改善した場合には実証実験等の出張が必要になるため,その際の旅費等として使用予定である.
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