研究課題/領域番号 |
19K12912
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研究機関 | 公立小松大学 |
研究代表者 |
松井 優子 公立小松大学, 保健医療学部, 教授 (00613712)
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研究分担者 |
真田 弘美 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50143920)
須釜 淳子 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (00203307)
村山 陵子 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (10279854)
紺家 千津子 石川県立看護大学, 看護学部, 教授 (20303282)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗がん剤 / 血管外漏出 / サーモグラフィー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、抗がん剤の点滴静脈内投与において、血管外漏出が発生した際の皮膚障害である皮下組織の硬結を予防するための判断と行動のアルゴリズムを作成することである。 抗がん剤の血管外漏出が皮下組織に侵襲を及ぼし、炎症、潰瘍、壊死などを発生させることは広く知られている。臨床現場において、血管外漏出を早期に発見し、これらの皮膚障害を予防しようとする試みが行われてきたが、すべての皮膚障害を予防するに至っていない。抗がん剤治療を継続して受けている患者にとって、血管外漏出後の皮下組織の硬結は、皮下組織の変化による苦痛のみならず、その後の抗がん剤投与の際の静脈穿刺を困難にすることから、治療の継続の困難に至る可能性がある。2人に1人ががんに罹患する我が国において、抗がん剤の血管外漏出による皮下組織の硬結の予防策を確立することは、重要な課題である。 本研究チームは、これまで血管外漏出を早期に発見する方法として、赤外線サーモグラフィーに着目し、抗がん剤の投与中に赤外線サーモグラフィーで皮膚表面温度を観察することによって、その温度変化から血管外漏出を肉眼的観察よりも早期に発見できることを明らかにした。また、この血管外漏出が硬結の発生と関連する可能性を見出してきた。 研究チームの独自のサーモグラフィーによる硬結の予測力は、感度93.6%、特異度96.7、陰性的中率99.6であったが、陽性的中率は65.2であった。このデータをもとに、昨年度は、硬結を予防するためのアルゴリズム試作版を作成した。今年度はこの予測率をさらに向上させることを目指し、静脈の形状、滴下速度による影響を考慮した再度分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、臨床の外来治療室において抗がん剤治療を受ける患者を対象にし、臨床現場に足を踏み入れて調査するものである。計画立案の際には、臨床の施設に内諾を得ており、調査の開始に向けて調整を進めていた。しかし、COVID-19の流行のため、対象施設が外部者の入室禁止となり、中断を余儀なくされた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究期間で、主任研究者による先行研究で得た臨床のデータをもとに、本研究がめざす「抗がん剤の点滴静脈内注射の血管外漏出に関連する皮下の硬 結を予防するためのアルゴリズム」の試作版を作成した。 今後は、臨床の抗がん剤治療に従事する看護師の意見を聴きながら実行可能性を考慮しつつブラッシュアップさせ、実用性の高いアルゴリズムの作成を目指す。 Covid-19の流行状態により、臨床現場での抗がん剤の血管外漏出による皮下組織の硬結予防効果の検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の影響により、臨床での調査が中断した。このため研究の進行が遅れている。次年度の臨床調査にかかる消耗品や結果の公表、論文作成にあてる。
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