研究課題/領域番号 |
19K12913
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
高橋 大志 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 講師 (20549943)
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研究分担者 |
高橋 真悟 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 助教 (20804397)
児玉 直樹 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (50383146)
松尾 仁司 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 教授 (70417012)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒートショック / 赤外線撮影装置 / 刺激装置 / 血管反応 / 判定システム |
研究実績の概要 |
本研究では、入浴時ヒートショックによる死亡者数を減少させることを目的として、ヒートショックの危険度を判定できる新規なシステムを構築し生体計測実験を実施した。本年度(2019年度)では、危険度判定システムを構築するため、冷温熱刺激装置と末梢血管透過撮影装置を作製した。冷温熱刺激装置は、手掌の大きさに適したペルチェ素子及びプログラマブル温調機能付きの電源、ヒートシンク及び放熱用ファンを用い、各部品を熱伝導性接着剤(ThreeBond社製)等で固定することで冷温熱刺激装置を作製した。無負荷条件による温度測定実験の結果、10~40℃の範囲において温度上昇及び下降を確認し、任意温度で安定させることが可能であった。設定温度に対する安定性については、電源のPID制御における各項目を最適化させ対応した。本装置を手掌へ装着し、温度制御性の確認実験を実施した結果、10~40℃の範囲で設定温度での安定が確認され、また10~40℃の範囲で経時的に連続した温度変化(温度サイクル条件)を実施できることが確認され、冷温熱刺激装置として利用できることが確認された。他方、末梢血管透過撮影装置は、手指の末梢血管を対象として、近赤外線LED、暗視カメラ及び自作治具を用いて作製した。本装置を手指に装着し撮影を試みた結果、血管が黒く描画され、その画像の保存も可能であった。実験後に、保存画像中の血管径を画像処理ソフトウェアを用いて定量的に計測できたことから、本装置を血管透過撮影装置として利用できることが確認された。以上の2つの装置を組み合わせることで危険度判定システムを構築した。生体計測実験では、手掌に冷温熱刺激装置、手指に血管透過撮影装置を固定し40℃一定条件での加温実験を行った結果、経時的な血管の拡張及び収縮(血管反応)を定量的に計測でき、対象者数は少ないものの被験者間の血管反応性には違いが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度では、入浴時ヒートショック危険度判定システムの構築を計画していた。本システムの構築において、当初から予定していた作製方法で冷温熱刺激装置及び末梢血管透過撮影装置を作製した結果、想定外の大きな問題や予想外の課題が発生しなく想定通りの装置性能を得ることができ、円滑に各装置を作製することが可能であった。このため、本年度内に時間的な余裕を持つことができ、ここで得られた時間的余裕を活用して、次年度に予定している本システムを用いた生体計測実験についての研究倫理申請書類の作成、及び本学(高崎健康福祉大学)の研究倫理委員会への申請を実施した。研究倫理委員会での倫理審査の結果、本研究内容の承認が本年度内に得られたことから、次年度に予定していた生体計測実験の一部(手掌加温による手指末梢血管の反応性に関する定量評価実験の一部)を本年度内に実施することができた。以上、本年度に計画していたヒートショック危険度判定システム構築のための冷温熱刺激装置並びに末梢血管透過撮影装置の作製のみならず、生体計測実験の一部を実施することができた事から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、本年度に構築した入浴時ヒートショック危険度判定システムを用いた生体計測実験を予定している。生体計測実験では、対象者を健常成人若年者とし、手掌を加温、もしくは冷却した際の経時的な血管径の変動を計測する。まずは、一般的な条件で実験を行い、そこで得られた結果から加温冷却条件をヒートショックの判定に対して最適化する。この温度条件最適化の実施に当たり、冷温熱刺激装置の各種条件設定及び改良等を継続的に実施する。また、設定最適化や改良を実施していくと共に、冷温熱刺激に対する健常成人若年者における末梢血管径の経時変動も計測する。これにより、冷温熱刺激に対する若年者間での血管反応性の相違を明らかにしていく。 また、実際の入浴時においては、居間から脱衣所、そして浴室(入湯)といった、温暖環境から寒冷環境、そして再び温暖環境に暴露されることでヒートショックが発症すると報告されているため、上記の温度条件最適化を実施した後には実際の環境に即した条件(寒暖差温度サイクル条件)での血管径の経時変動を計測する実験を実施する。本結果から、被験者間や性別による相違があるかを検証し、相違があった場合には冷温熱刺激条件を変更し更なる実験を行うことで血管反応性を最も反映する条件を明らかにする。本実験を実施することにより、次々年度(2021年度)に予定している高齢者における血管反応性の計測実験の結果と若年者での結果を比較できるようになり、この比較によって加齢による血管反応性の変化を捉えることが可能になる。 また、ヒートショックの誘発要因である血圧の変動は、末梢血管の収縮拡張機能(血管反応)に起因し、また血圧は動脈硬化の状態によっても変動することが知られているため、血管反応性と動脈硬化の状態を比較検討する必要があるため、次年度に血圧脈波検査装置を購入し、血管反応性と動脈硬化状態の相関についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒートショック危険度判定システム開発における末梢血管評価装置のソフトウェアの導入・開発において、無料で利用できる画像処理ソフトウェアの導入や無料のソフトウェア開発環境の整備を行った。その後、生体計測実験を行い、末梢血管を上記ソフトウェアで評価した結果、温熱刺激による血管径の変動を計測することが可能であった。また、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、発表を予定していた学会が中止となる等もあり翌年度への繰り越しとなった。 次年度では、当該研究成果の発表(学会、論文投稿、英文校正等)及び末梢血管撮影装置の構築に一部課題が生じている状況もあるため、末梢血管撮影装置(ハードウェア)の改良のための物品(撮影カメラの光学レンズ、撮影画像保存用HDD等)の購入等に使用する。
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