研究課題/領域番号 |
19K12915
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研究機関 | 星城大学 |
研究代表者 |
林 久恵 星城大学, リハビリテーション学部, 准教授 (80444404)
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研究分担者 |
河野 健一 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 講師 (10638480)
岩本 哲哉 国立保健医療科学院, その他部局等, 研究員 (40782412)
小池 孝康 岐阜保健大学短期大学部, その他部局等, 助教 (10720253)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病性足潰瘍 / 歩行 / 階層的クラスタリング / ディープクラスタリング / リスクの層別化 |
研究実績の概要 |
糖尿病神経障害および下肢動脈血流障害を伴う糖尿病性足潰瘍の再発予防には、歩行時に足底にかかる負荷量の管理が不可欠であることが指摘されている。しかし、足底圧を測定できない環境において、歩行に伴うリスクを把握し、安全に歩行練習を進めることは困難な課題であった。 そこで、本研究では、歩行時の足底圧および足潰瘍の再発に影響を及ぼす因子について調査を行い、深層学習により足潰瘍の再発リスクを分類すること、リスクに対応した歩行再建支援プログラムを構築し、足潰瘍再発予防効果を検証することを目的とする。 初年度の課題として、歩行時足底圧と下肢機能の測定結果および測定後6ヶ月間の足潰瘍形成・足趾切断に関する追跡調査を行い、潰瘍再発・足趾切断のリスク分類を行った。糖尿病性足潰瘍の治療を実施している医療機関3施設にて、適格基準を満たし本研究参加の同意が得られた102例204肢を登録し、追跡調査を完了した症例を対象に解析を行った。歩行中の足圧軌跡や負荷量に直接的な影響を及ぼす因子から、4つのクラスターに分類した。各クラスターの潰瘍再発・足趾切断率はそれぞれ 0%・3.7%・9.8%・22.2% であり群間に有意差を認めた(p=0.046, log-rank)。歩行に影響を及ぼす因子を用いたクラスタリングによって、潰瘍再発・足趾切断リスクを分類できることが確認できた。 また、歩行時の足底圧と足圧中心の軌跡を二次元画像に変換し、足圧パターンとして提示することで、歩行時に顕在化する足圧の問題を視覚的に把握できることが解析過程で明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象症例の潰瘍再発・足趾切断リスクを分類するため、歩行時足底圧と下肢機能の測定結果および測定後6ヶ月間の足潰瘍形成・足趾切断に関する追跡調査の結果を集約し、多面的に解析を行った。 潰瘍再発・足趾切断と歩容との関連を検討するための解析方法の検討に時間を要したが、結論として、歩容に関する情報は、階層的クラスタリングを行うことで実用的な潰瘍再発・足趾切断リスク分類が可能になることが確認できた。 階層的クラスタリング以外の解析として、ディープクラスタリングを試行した。歩行時の足底圧と足圧中心の軌跡を二次元画像(足圧パターン)に変換してリスク分類を試みたが、解析結果と臨床像は一部乖離していた。しかし、足圧パターンには足趾切断既往を有する症例や神経障害を有する症例の特徴が反映されており、歩行に伴う足圧の問題を視覚的に把握する際に有用であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の調査結果より、潰瘍再発および足趾切断例は全例血液透析症例であり、その主たる原因は血流障害の増悪であることが分かった。また、歩行時の足底負荷の最大値が相対的に低く、活動量が低いことも確認できた。歩行時の足底圧については、足趾切断既往を有する場合に特徴的な足圧中心軌跡(COP)と圧の集中が観察された。したがって、歩行再建プログラムは血流障害の増悪予防を考慮し、COPの偏移および圧の集中がみられる症例に対しては活動量の拡大を安全に進める工夫が必要になると考える。これらの課題に対応するプログラムを設定し介入効果の検証を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
活動量のモニタリングに必要なセンサーを初年度に購入するための予算を確保していたが、購入予定の製品より実用的なセンサーが発売されるという情報を受け、当該製品の発売を待ってから購入することにしたため次年度使用額に変更が生じた。
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