研究課題/領域番号 |
19K12917
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
伊藤 祥一 長野工業高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (10369978)
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研究分担者 |
藤澤 義範 長野工業高等専門学校, 電子情報工学科, 教授 (00342494)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 点字 / ウェアラブルデバイス |
研究実績の概要 |
指先に装着した感圧センサで点字をなぞると翻訳結果が音声で読み上げられるデバイスであるウェアラブル点字リーダー(以下WBR)を開発している。既存の感圧センサと専用ソフトウェアを用いると点字の凸点情報を取り込む際にいったんCSVデータとしてエクスポートしてからWBRに取り込む必要があったが、令和2年度までにWBRのソフトウェアで圧力データを直接読み込むことが可能になっている。圧力データを点字の文字単位に再構築し、翻訳するという一連の流れが完成しているが読み取り精度が約50%程度と不十分なレベルにある。 現在は感圧センサが15cm四方の基板上に作り込まれており点字をセンサでなぞることはできないのでアクリル板に点字を刻印し、板をセンサに押し当てて動かすという形で点字を指でなぞる動作を模して実験を進めている。人間の指で点字をなぞるという特性上、力の伝わり具合が均等でなく、現在のアルゴリズムでは点があるべきでない場所に点があるように判定されてしまったり、逆に点があるべき場所に点が欠落してしまう現象がある。令和3年度は読み取り精度を向上させるための検討を中心に行った。ハード面では、現在は大型の基板に作り込まれているセンサを指先に装着できる形にするため、開発会社と仕様について検討した。ソフト面では、点字用のスペル訂正機能の開発を行った。感圧センサから誤りを含むデータが送られてきても、多少の誤りであれば翻訳する段階で正しい単語に訂正すればよい。名詞を中心とする217万語の辞書を作成し、点の過不足を訂正する点字用スペルコレクタを開発しWBR本体に統合した。缶の上面に刻印された点字など、上下左右逆さに点字をなぞった場合にも対応する。固有名詞など一部のスペル訂正に問題があることがわかったので、品詞を識別するようにするなど今後の改良が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画ではアルゴリズムの実装と並行して、現在は15cm四方の基板に固定されている感圧センサ素子を指先に装着できる形に加工し、ウェアラブルタイプのセンサを試作して点字を取り込む実験を予定していた。アルゴリズムの検討とひととおりの実装は完了しており、圧力データを点字の文字単位に再構築して翻訳するという一連の流れが完成している。しかし読み取り精度が不十分なためさらなる改良を必要としている。センサに関してはコロナ禍による影響で十分な打ち合わせと技術的なすりあわせが進まず試作版を作ることができていなかったが令和3年度中に打ち合わせと仕様検討を終えており、令和4年度中に試作と実験に進める見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
感圧センサの素子部分を回路基板から切り離して指先に装着できるウェアラブルタイプのセンサに加工し、実際に指で点字をなぞったときのデータを取り込んで点字に再構成する実験を行う。指先でなぞったとき固有のエラーパターンを洗い出し、圧力分布データを点字の文字単位に再構築するアルゴリズムの改良に役立てる。ここで得られた知見を点字用スペルコレクタのアルゴリズム改良にも反映する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による影響でセンサ開発会社との打ち合わせ・技術的なすりあわせがほとんどできず、センサの改修費用として計上していた予算と旅費がほぼ手つかずの状態となった。センサ開発会社の内諾はすでに得られているため、令和4年度はセンサを回路基板から切り離して指先に装着できる形に加工するための改修費用として執行できる見込みである。
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