指先に装着した感圧センサで点字をなぞると翻訳結果が音声で読み上げられるデバイスであるウェアラブル点字リーダー(以下WBR)を開発している。既存の感圧センサと専用ソフトウェアを用いると点字の凸点情報を取り込む際にいったんCSVデータとしてエクスポートしてからWBRに取り込む必要があったが、令和2年度までにWBRのソフトウェアで圧力データを直接読み込むことが可能になっている。連続する圧力データを点字の文字単位に再構築し、翻訳するという一連の流れが完成しているが読み取り精度が約50%程度と不十分なレベルにある。 ハードウェア面では、令和4年度中に感圧センサの改修を完了できた。従来は15cm四方の回路基板上に一体型で作り込まれた感圧センサを使っていたためこの感圧センサで点字をなぞることはできなかった。そのため、アクリル板に刻印した点字を押し当てて動かすという形で点字をなぞる動作を模擬して実験を進めていた。新しく開発した感圧センサは回路基板と読み取り部分が分離されており、読み取り部分はハンディスキャナタイプになっている。これを使えば、点字をハンディスキャナ型の感圧センサでなぞることで点字を読む動作を模擬することができる。これまでの経験を踏まえてセンサの分解能と感度を調整してあり、より高精度な読み取りが期待できる。 ソフトウェア面では、引き続き点字用のスペル訂正機能の開発を進めた。感圧センサから誤りを含むデータが送られてきても、多少の誤りであれば翻訳する段階で正しい単語に訂正すればよい。これまでに名詞を中心とする217万語の辞書を作成し、点の過不足を訂正する点字用スペルコレクタを開発しWBR本体に統合した。缶の上面に刻印された点字など、上下左右逆さに点字をなぞった場合にも対応する。固有名詞など、辞書にない単語のスペル訂正に関する問題は引き続き検討中である。
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