研究課題/領域番号 |
19K12919
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
金 慧 千葉大学, 教育学部, 准教授 (60548311)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フランス革命 / 熱狂 / 理性 / 公共圏 / 観衆 |
研究実績の概要 |
2020年度は、フランス革命に対するプロイセン市民の熱狂に関するカントの議論を分析した「熱狂と理性:カント哲学における観衆の公共圏の位置づけ」が『政治思想研究』20号に掲載された。 本論文は2019年度より進めてきたカントの国際法論の研究の一部である。この論文では、フランス革命に対して熱狂的な反応を示したプロイセンの市民についてのカントの論述を分析することを通じて、以下の点を明らかにした。 一つ目は、カントの哲学において熱狂と理性は排他的な関係にあるのではなく、理性こそが熱狂を生じさせる関係にあるということである。理性は理念を定立することによって感性を刺激し、これが感情となって現れたものが熱狂である、と理解することができる。したがって、ここでは理性と感情という二分法は必ずしも成立しない。 第二に、熱狂の対象は理念であり、フランス革命は共和制という理念の実現であると考えられていたということである。しかしこれはあくまで哲学者としてのカントの診断であるという点には注意が必要である。 最後に、熱狂的な反応を示した市民(観衆)はそうした反応をつうじて対象に評価を下しており、その点で観衆による公共圏というものをカントの議論から析出することができるという点である。これまでのカント哲学の研究では、理性の公的使用のような言論の交換を通じた識者の公共圏については注目されることが多かったが、本研究は、これまでさほど論じられてこなかった「観衆の公共圏」を革命に対する反応を手がかりに明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、フランス革命に対するプロイセン市民の熱狂に関するカントの議論を分析した「熱狂と理性:カント哲学における観衆の公共圏の位置づけ」が『政治思想研究』20号に掲載された。本論文は2019年度より進めてきたカントの国際法論の研究の一部である。 コロナによる緊急事態が続いたために研究は想定どおりには進捗せず、当該主題に関する研究報告や論文掲載は上記の一点のみである。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続してカントの哲学のなかから非理想理論としての国際法論を再構成することに取り組む。 具体的には、過去に生じた領土の取得や交換に対してどのような対応を取ることが規範的に望ましいのかをカントの議論から読み取ることを試みる。 さらに、カントが非理想的状態としての国際社会から理想的な国際社会への移行過程をどのように展望していたのかを歴史哲学と法哲学の二つの次元を慎重に区別しながら明らかにすることである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの感染拡大の影響から、研究室に行くことが困難であったため予定通り研究が進まず、物品費を中心に研究費を十分に使用することができなかった。2021年度もコロナの影響次第では研究費を予定通り使用することができない恐れがあるため、前年度以上に計画的に使用するつもりである。
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