研究課題/領域番号 |
19K12924
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
永守 伸年 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 講師 (70781988)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 信頼 / 倫理学 / 超越論的哲学 |
研究実績の概要 |
本研究は(1)自律概念の概念史研究、(2)信頼概念の哲学的分析、(3)関係的かつ感情的な自律概念の提示、という三段階の研究をおこなう。さらに、各段階の成果を(i)異分野の研究者との研究会の開催、そして(ii)国内外の学会発表によって公表する。2020年度は、上記の研究目的のうち(2)の「信頼概念の哲学的分析」を遂行した。そのために、(i)信頼研究のサーヴェイと(ii)感情的態度としての信頼の分析をおこなった。(i)信頼研究のサーヴェイ: 2019年度の研究において個人的自律の歴史とその限界が確認された上で、新たに関係的自律の可能性が信頼概念に基づき考察された。まずは、これまで申請者がおこなってきた哲学的信頼研究に基づき、信頼概念を「不確実な状況下における期待」と理解した上で、D・ヒューム、G・ジンメル、T・パーソンズ、N・ルーマンらのテクストから信頼の思想が抽出、分類された。(ii) 感情的態度としての信頼:さらに、A・バイアー、K・ジョーンズら、現代の哲学的信頼研究が「不確実な状況下における期待」を「感情的態度」とみなすことを文献研究によって確認した。そして、信頼における「感情的態度」が一方ではヒューム主義的な感情の理論に支持されつつ、他方ではその感情的交流が社会秩序の誘因として自律の「ノモス」の要素となりうることを論証した。
また、(i)と(ii)の研究に加えて、信頼と道徳の関係をめぐる研究プロジェクトの一環として、「倫理学における超越論的方法」の精査をおこない、その研究成果を関西倫理学会において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した「研究の目的」の(2)「信頼概念の哲学的分析」を遂行しただけでなく、「倫理学における信頼研究」の一環として信頼概念の超越論的論証を検討することができた。「信頼概念の哲学的分析」の成果は、近年に公刊が予定されている学術書『信頼と裏切りの倫理学』の第1章に、そして「倫理学における信頼研究」の成果は、同著作の第4章に部分的に収録される見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は(1)自律概念の概念史研究、(2)信頼概念の哲学的分析、(3)関係的かつ感情的な自律概念の提示、という三段階の研究をおこなう。さらに、各段階の成果を(i)異分野の研究者との研究会の開催、そして(ii)国内外の学会発表によって公表する。2021年度は、上記の研究目的における(3)「関係的かつ感情的な自律概念の提示」を遂行する。具体的には、以下の(i)自律の「ノモス」の検討と(ii)自律の「アウトス」の検討をおこないたい。
(i)自律の「ノモス」の検討: 研究目的(1)では関係的自律の構想、(2)では信頼概念の内実が示された上で、(3)の段階では信頼の社会的醸成こそが「関係的」自律を可能とすることを明らかにする。具体的にはT・パーソンズが定式化した「ホッブズ問題」を検討し、契約や合意ではなく、「感情的態度」として結ばれる信頼の関係が「ノモス」としての社会秩序の起源を与えることを主張する。
(ii)自律の「アウトス」の検討: 最後に、信頼関係の醸成が、ひるがえって関係を結ぶ諸個人の自己形成の契機、すなわち「アウトス」の契機にも寄与することを論じる。とりわけ、信頼研究のカント主義としてのO・オニールの研究を検討し、相手の信頼に値しようとする動機が、信頼を結ぼうとする個人にとっては規範的なアイデンティティの形成を促すという、「信頼性の理論」を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウィルスの影響のため、予定されていた国内外の学会発表の予定がキャンセルされ、旅費の多くが使用されないまま残った。2021年度も同じく感染症対策のために学会のキャンセルが相次ぐことが予想されるため、書籍の購入費ならびに研究協力者に対する謝金に予算を計上したい。
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