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2021 年度 実施状況報告書

行為者性概念の再構築――ヘーゲル実践哲学からのアプローチ

研究課題

研究課題/領域番号 19K12925
研究機関宮崎公立大学

研究代表者

川瀬 和也  宮崎公立大学, 人文学部, 准教授 (90738022)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード行為者性 / 自律 / アイデンティティ / 真正性 / ヘーゲル / 疎外 / 教養
研究実績の概要

応用哲学会第13回年次研究大会(2021年4月、オンライン開催)における個人研究発表「自律性と「本当の自分」」では、行為者性、自律、アイデンティティ、真正性という四つの概念の込み入った関係について整理した。行為者性と自律、自律とアイデンティティ、そしてアイデンティティと真正性はしばしば関連のある概念として論じられる。しかし、それらがどのように関連するのか、また、それらの関連が必然的なものであるのか否かははっきりしない。発表では、自律的でないが行為者性の発露であるような行為や、真性ではないアイデンティティの可能性について検討し、複雑に絡み合った議論を解きほぐした。

ワークショップ「〈疎外〉のポテンシャルを考える」(2022年2月、オンライン開催)では、長門裕介氏と田畑慎一氏の協力を得て、「自律」と対になる概念である「疎外」についての議論を展望した。マルクス主義とJ. ロールズ政治哲学の関係や、J. ハーバーマスの社会哲学と疎外論の関係についての研究報告を通じて、現代の疎外論の到達点について整理することができた。私自身も、「自律の条件としての疎外――ヘーゲルにおける疎外と教養形成」と題して口頭発表を行った。私の発表では、ヘーゲルが『精神現象学』(1807年)の「教養」章で展開している疎外論について、自律との関係に注目しながら論じた。『精神現象学』の疎外論は、自己疎外によって教養形成が達成されるという独特の構造を持っている。私は、自己疎外によって人倫=社会的でありつつ個人の内面に入りこみ、自分自身と一体のものとして意識されている規範から距離を取ることによって自律が達成される、とヘーゲルが論じていることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウイルスの感染拡大が収まらなかったことで、在外研究などを思い通りに進めることができなかった。また、「自律」を巡る議論の広がりが当初見通していたよりも広範囲にわたっており、文献調査計画の練り直しを余儀なくされた。そんな状況の中でも、真正性や疎外といった概念との対比によって、行為者性や自律についての現代的な観点での整理やヘーゲル哲学との関係を明らかにする研究成果を提示することが出来た。

今後の研究の推進方策

新型コロナウイルス感染拡大により、在外研究ができないまま最終年度になってしまったことから、研究計画の大幅な変更によって成果を着実に出せるように工夫することを考えている。これまでの複数の研究発表や、それ以外の研究によって得られた知見を確実に論文にまとめることで、研究成果を広く利用可能な形にしていくことを目指す。

次年度使用額が生じた理由

最大の支出項目として予定していた在外研究が、新型コロナウイルス感染拡大により実施できなかった。在外研究のために購入を見合わせていた書籍(高額な全集等)の購入や、ワークショップの開催等を通じて、効果的に使用していきたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 自律の条件としての疎外――ヘーゲルにおける疎外と教養形成2022

    • 著者名/発表者名
      川瀬和也
    • 学会等名
      ワークショップ 〈疎外〉のポテンシャルを考える
  • [学会発表] 自律性と「本当の自分」2021

    • 著者名/発表者名
      川瀬和也
    • 学会等名
      応用哲学会第13回年次研究大会

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公開日: 2022-12-28  

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