本研究課題においては、ヘーゲル哲学と現代の行為の哲学の両面から、行為者性の理論を構築に寄与することをめざした。 ヘーゲル哲学研究の面では、『精神現象学』における教養論・疎外論に、現代の自律的行為者の理論とつながる側面が見出せると示したことが最大の成果である。これに加えて、ロバート・ブランダムの推論主義的なヘーゲル解釈における相互承認の役割を解明した。 現代行為論研究の面からは、行為者性の理論が自律性の理論と深く結びついていることを明らかにした。自律論のうち、特に影響力の大きい階層説の代表的な理論について、その問題点を指摘した。
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