研究課題/領域番号 |
19K12931
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
小手川 正二郎 國學院大學, 文学部, 准教授 (30728142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 哲学 / 倫理学 / レヴィナス / 現象学 / ジェンダー論 / 家族論 / フェミニズム / 反出生主義 |
研究実績の概要 |
レヴィナスの性差論と家族論を彼に内在する観点から包括的かつ正確に理解し直すという本研究の第一の目的のために、レヴィナスの家族論に関する研究を収集して内在的読解を進めた。また、レヴィナスの家族論、とりわけその親子論を、現代哲学の文脈に置き直すことでその倫理学的意義を客観的に評価し、応用可能性を具体的な形で示すという第二の目的のために、英米系で議論が進められている「反出生主義」との関連について研究を進めた。とりわけ反出生主義の代表的な論者であるD・ベネター『生まれてこない方がよかった』についての議論をまとめ、それとの対比でレヴィナスの非存在論的な生殖論・親子論が秘めている可能性を浮き彫りにし、『現代思想』11月号の「反出生主義」特集に寄稿するとともに、11月に開催されたレヴィナスをめぐる国際会議において仏語でその成果を発表した。そこでの質疑応答などで得られた成果は、レヴィナスの親子論を展開するために、貴重な成果となった。 これに加えて、レヴィナスの性差論・家族論・他者論に着想をえた思考を、現代の日本の文脈に置き直して展開し、その成果を一般向けの著書『現実を解きほぐすための哲学』(トランスビュー、2020年)として公刊した。そこでは、レヴィナスの思想を現代の哲学や倫理学および政治哲学の文脈に置き直して議論することを試み、そうした分野からの反応をまってさらなる吟味・検討につなげる足掛かりができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反出生主義の検討と一般向けの著書の執筆に多くの時間を割いたため、レヴィナスの性差論・家族論の内在的読解については、来年度以降にさらに研究を進捗させる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、レヴィナスの性差論・家族論の内在的読解を進めるとともに、性差論に関しては、現代のフェミニスト現象学やジェンダー論との関連について、親子論については現代の家族倫理学との関連について研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月~3月にかけて国際学会への参加およびフランスでの文献収集を当初計画していたが、コロナウィルス感染拡大の影響をうけて自粛したため、2019年度の旅費支出にかかる予定だった金額を2020年度以降に繰り延べたため。
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