研究課題/領域番号 |
19K12931
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
小手川 正二郎 國學院大學, 文学部, 准教授 (30728142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 哲学 / 倫理学 / レヴィナス / 現象学 / ジェンダー / 家族 / フェミニズム / フェミニスト現象学 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度から継続して性差の現象学の理論的な研究を進め、フェミニスト現象学への諸批判に対して応答する可能性について考察して、その成果を「経験の記述は、なぜ批判的なのか?―フェミニスト現象学への諸批判に対する応答」と題して『現象学年報』に発表した。また、現象学的な観点からのレヴィナス哲学の意義について、フランスの哲学者ジャン=ミシェル・サランスキのレヴィナス読解と併せて論じ、国際学会「Les voies de l’universel : Jean-Michel Salanskis」で仏語で発表した。 家族の現象学については、レヴィナスの文献や草稿の研究を進めることと並行して、分析哲学における反出生主義の議論とレヴィナスの親子論とを対置することで、レヴィナスの家族の現象学の現代的意義を探求し、その成果を「「子どもをもつ」とはいかなることか──反出生主義に抗するレヴィナス」と題して、『個と普遍――レヴィナス哲学の新たな広がり』(法政大学出版局、2022年)に発表した。またレヴィナス哲学を下敷きにした独自の生殖の哲学を展開した中真生『生殖する人間の哲学』(勁草書房、2021年)の合評会を企画し、レヴィナスの家族の哲学の広がりについて中氏や合評会登壇者と意見交換を行い、自身の研究についての貴重な情報や視点を得ることができた。 また性差の現象学の延長線上に位置する人種の現象学についての研究も進め、レヴィナス的な観点を生かしつつ、それをアジア系に対する性差別・人種差別への考察に応用する可能性を探り、2022年3月にハワイで開催されたアジア研究協会(AAS)のパネルで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パンデミックの影響で当初予定していた国外・国内出張を行うことはできなかったが、その代わりにオンラインでの国際シンポジウムへの参加などを通じて研究発表や情報収集を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
レヴィナスの性差の現象学と家族の現象学についての文献的な研究や応用的な研究は当初の予定通り遂行することができたので、最終年度にはこれまでの成果を統一的な観点からまとめて、研究発表や書籍の形にしていくことを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの影響で予定していた国外・国内出張にあてていた予算を消化しきれなかった。来年度はこうした予算を国外・国内出張にあてたり、他の用途(講演会の開催・謝金)に使用する予定である。
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