本研究は、戦後日本の人体実験に関して「子ども」という視点から具体的な事例を検討し、戦前・戦時中と戦後が接続する議論を構築する。現代の生命倫理学、歴史学、法学における戦時中の旧日本軍の731部隊にかかわる言説を踏まえた現代史研究である。これまでの戦後の人体実験に関する国内の現在の先行研究は、精神病院の患者に対するツツガ虫病人体実験やロボトミー手術の実態などが主要なテーマとなってきた。これに対し本研究は、「子ども」という存在に注目し、精神障害者と同じく「同意」という点で最もヴァルネラビリティの高い存在を、日本の医学と福祉がいかに処遇してきたのかを明らかにする。
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