研究課題/領域番号 |
19K12940
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研究機関 | 静岡英和学院大学 |
研究代表者 |
大坪 哲也 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 講師 (50826998)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | デンマークヘーゲル主義 / デンマーク黄金時代 / キルケゴール / ヘーゲル / ルズヴィ・ハイベア / シバーン / マーテンセン / 宗教哲学 |
研究実績の概要 |
当該研究のプロジェクトを進めるため、2019年度は以下の調査に着手した。 19世紀デンマーク黄金時代の文献調査、収集のため、2019年8月4日から8月21日の間、デンマークに渡航し、現地での資料調査を行った。2019年8月14から16日に、コペンハーゲン大学キルケゴールリサーチセンターが主催する、キルケゴールカンファレンス2019(SKC Annual Conference)に出席し、留学時代の恩師から研究上の知見を得た。またデンマークでの現地調査において、19世紀黄金時代の貴重な文献を収集することができた。 帰国後その成果を纏め、2020年3月24日にプロジェクトの課題であった博士論文を、「デンマーク黄金時代から考察されるキルケゴールとヘーゲルの関係―初期キルケゴール思想におけるデンマークヘーゲル主義の影響史」として提出した。 また19世紀デンマーク哲学の貴重文献の翻訳作業も進めた。具体的には、黄金時代のヘーゲル理解の前提となる、ルズヴィ・ハイベアの主要著作と、彼が編集した1828年の『コペンハーゲン飛行便』におけるエーレンスレイヤーの評論記事の翻訳を完了した。キルケゴールの主要文献についても、ヘーゲル哲学と初期思想の影響史的考察の中心となる、『今なお生ける者の手記』、『イロニーの概念』、『あれかこれか』について、テキスト分析をすべて完了した。 学会発表については、新型コロナウイルスの影響により、予定していた発表を見送ることになった。そのため個別の学会発表については報告することができなくなった。しかしプロジェクトの成果を300頁に及ぶ博士論文として完成させることができたのは幸いであった。博士論文で反映することのできなかった研究領域については、今後の学会発表の準備のために、継続的に文献考証を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キルケゴールとヘーゲルの影響史研究の前提として、現在までデンマークにおけるヘーゲル主義とヘーゲル批判の研究を完了した。1820年代にルズヴィ・ハイベアがデンマークのヘーゲル主義の中心人物となる歴史的背景について、また彼が公刊した主要著作についての研究を完了した。またヘーゲル批判の系譜としては、シバーンの反ヘーゲル論文、『現代において考察されるヘーゲル哲学の論評と研究』(1838年)を詳細に考察し、キルケゴールに対するシバーンのヘーゲル論理学批判の実質的な影響範囲について確定し、研究成果としてまとめた。 同様にエーレンスレイヤーやアドラー思想などの現地での文献調査を行わなければ分からない領域についても、研究を纏めることができた。 プロジェクトの中心となる初期思想におけるヘーゲルの影響については、キルケゴールの処女作『今なお生ける者の手記』、学位論文『イロニーの概念』、初期の代表作『あれかこれか』のテキストを分析し、デンマークヘーゲル主義とヘーゲルのドイツ語テキストによる影響関係を詳細に分析することが出来た。その成果は博士論文で纏める通りである。 デンマーク黄金時代に関する膨大な文献調査、資料整理についても、順調に進んでいる。これらの成果を今後、翻訳という仕方で生かしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究の重要課題として博士論文を完成することができたのはよいことであった。今後の研究方針としては、博士論文の出版のために、補足のための資料整理を行い、出版までの準備に万全を期したい。また当該研究の対象となった19世紀デンマーク哲学における重要文献の翻訳作業を進め、これらも出版していけるように努めたい。 具体的には、デンマークヘーゲル主義研究の要となる、ハイベアの初期哲学の著作群とエーレンスレイヤーの論争記事の研究を進め、それらを学会発表や文献の翻訳という仕方で、研究を進めていきたい。またシバーンのヘーゲル批判についても、主要テキストの『現代におけるヘーゲル哲学の論評と研究』の翻訳作業を進めていく。 学会発表については、新型コロナウイルスの影響で滞ってしまった。終息後の時期に向けて着実に準備を進めていきたい。海外での研究調査も2020年度は見送ることになるため、今年度は国内での学術成果の発表、出版の準備に努めたい。 今年度の方針としては、2021年度の春に学術論文を出版できるように、最善の準備を図りたい。
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