研究実績の概要 |
本研究の目的は日本の現状を踏まえた移民の倫理学を構築することである。この目的を達成するために昨年度は社会契約論、特に暗黙の同意の概念の分析を行った。統治下における居住の事実から導出される暗黙の同意は外国人の統治への服従義務を正当化するだけなのか、それとも社会の成員資格を構成するのかはこれまで論争の的であった。これに関して本研究はロックにおける暗黙の同意に焦点を当て、暗黙の同意が成員資格を満たすことを突き止めた。しかし、この暗黙の同意の概念はあらゆる統治を正当化してしまうというヒュームの批判がある。この批判に対して本研究は暗黙の同意が成立するための規範的条件を析出することで、その擁護を図った(Kojo, "A defence of Locke's consent theory against Hume's critique" [chap.4]in Shimokawa and Anstey,Locke on Knowledge, Politics and Religion: New Interpretations from Japan,Bloomsbury USA Academic,2021)。
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