研究課題/領域番号 |
19K12942
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
佐藤 亮司 東京都立大学, 大学教育センター, 准教授 (90815466)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 予測誤差最小化理論 / 自由エネルギー原理 / 知覚 / 認知 |
研究実績の概要 |
本年度も新型コロナウィルス禍により、さまざまな影響を受けたが、いくつかの重要な成果を挙げることができた。本研究課題『予測誤差最小化理論における知覚と認知の関係の探求』においては、思考のような高次の認知機能を同理論の観点から理解することが鍵となる。というのも、知覚についてはこの理論の観点から既に多くの理論的実験的研究がなされているが、高次の認知機能についてはまだ研究の端緒についたばかりだからである。この理論を支持する研究者の間では近くは「自由エネルギーの最小化」の観点から理解されてきたが、近年では、計画や意思決定のような未来志向の認知的な働きは「期待」自由エネルギーの最小化の観点から研究が進められている。概念的な思考は必ずしも計画や意思決定のみに用いられるわけではないが、人間の計画、意思決定において概念的な思考が重要な役割を占めていることは明らかであるため、その観点から思考も理解できるのではないかという展望を持ち研究を進めている。現在の段階としては「予期自由エネルギー」最小化に必要なメカニズムの理解と、これまでの概念的な思考研究の整理の両面から研究を進めている。そのほかに、今年度は、昨今の陰謀論の広まりという喫緊の課題に対して、予期自由エネルギーの観点から理解し、人が陰謀論を抱き、それが放棄されなくなるメカニズムについて探求し、またそれに基づいて陰謀論を抱く人の合理性について評価する研究をおこなった。研究成果については、現在雑誌論文として投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、三つのサブプロジェクトに分かれており、それぞれについて現状を述べる。 サブプロジェクト1. 予測誤差最小化理論において哲学的な意味での「知覚」や「思考」 がどのように位置付けられるかという問題である。「あそこの床で犬が寝ている」という概念的思考と「あそこの床で犬が寝ている」という知覚は素朴にはカテゴリーの異なるもののように思われる。現在は予期自由エネルギーの観点から、これらの違いを理解しようと試みている。 サブプロジェクト2. はサブプロジェクト1.の成果に基づいて、知覚の認識論的役割の再評価が行われる予定である。このサブプロジェクトに本格的に取り組む段階に至らなかったが、次年度から本格的に研究を進めていく。サブプロジェクト3.は前述の陰謀論のような、認知と知覚の相互作用が関わる現代社会において重要性を増している問題に応用する問題である。予期自由エネルギーの観点から陰謀論を抱く人と社会的環境について現在研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は予測誤差最小化理論においては、目的指向的行為は予期自由エネルギーの観点から論じられるが、この観点と哲学的な思考研究との接続を目指していく。また、自由エネルギーの最小化は境界づけられた理性(bounded rationality)と直接的な関係を持つため、認識論的な観点からの研究も進めていく。研究成果はオンライン研究発表、対面での学会発表、論文投稿などを通じて積極的に発信していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの流行により、学会主張、ワークショップの開催等が難しくなったため。
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