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2022 年度 実施状況報告書

企業不祥事に関する組織的徳に基づいた評価枠組みの提案

研究課題

研究課題/領域番号 19K12944
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

杉本 俊介  慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (80755819)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード徳 / 徳倫理学 / 経営理念 / テキストマイニング / 日本企業
研究実績の概要

今年度は昨年度不十分だった組織の徳の解明を行なった。ただし 当初の計画では「組織的徳」と呼んでいたが、わかりやすさから「組織の徳」と呼ぶことにした。 具体的には、日本の上場企業の経営理念に示される徳をテキストマイニングによって調査した。テキストマイニングのツールとしてKH Coderを用い、経営理念の頻出語から徳を抽出し、その出現頻度を調べた(また徳がどのような文脈で強調されるかを共起ネットワーク等によって示した)。抽出された徳は、貢献心、信頼性、感謝、挑戦、公正、健全さや透明性などである。このうち、信頼性が組織の徳であることは前年度の「組織の徳倫理学 --- 組織不祥事を評価する枠組みの提案 ---」で指摘したが、今回の研究ではさらに、健全さや透明性が組織の徳であることを、前年度に提案した組織の徳の定義(その組織をとりまくステークホルダーの開花繁栄を構成する性格特性)に照らして示した。また、貢献心や感謝が徳であるかは一見明らかではないが、それが徳であることを1.開花繁栄を構成するか、2.統一性をもつか、という基準を満たすことで明らかにした。さらに、ビジネス倫理学における従来の徳倫理学的アプローチでは、知恵、勇気、節制、正義、チームスピリット、チームワーク、協調性、誠実さなどが徳として具体的に挙げられているが、これらは今回の調査で示した日本のビジネスシーンで徳だと示されているものとは大きく異なることを明らかにした。これはビジネス倫理学における従来の徳倫理学的アプローチがビジネスの現場を調査せずアームチェアから行われ、ビジネスの徳とはこういうものだと決めつけてきた可能性を示唆するものである。以上の成果は、日本経営倫理学会誌に「経営理念に表れる日本企業の徳 --- テキストマイニングを用いて ---」として投稿し、査読を経て掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

企業不祥事に関する組織的徳(組織の徳)に基づいた評価枠組みの課題であった具体的な徳について、信頼性以外に二つの徳を挙げることができた。

今後の研究の推進方策

日本固有の徳があることまで示すことができれば、徳倫理学が文化相対的であることを示すことができる。この点で徳川時代の大阪商人の学校「懐徳堂」で行われた徳の研究に注目し調査する予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で国内外の研究会に参加できず、当初計画が遅延・変更したため。次年度はビジネス倫理学における徳倫理学的アプローチの検討をさらに進め、国際ワークショップなどで発表し、国際学術誌に投稿する予定である。そのための旅費と英文校正での使用を計画している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 経営理念に表れる日本企業の徳2023

    • 著者名/発表者名
      杉本俊介
    • 雑誌名

      日本経営倫理学会誌

      巻: 30 ページ: 49-59

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 悪徳企業の株を売るべきか──株式売却のパズルから「よりよくお金を使う」を考える2023

    • 著者名/発表者名
      杉本俊介
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 51 ページ: 51-60

  • [雑誌論文] ミャンマーとロシアからの事業撤退は企業の道徳的義務か──人権を侵害しない企業と人権侵害を許さない企業の大きな違い──2022

    • 著者名/発表者名
      杉本俊介
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 50 ページ: 207-214

  • [学会発表] 組織の徳倫理学─組織不祥事を評価する枠組みの提案─2022

    • 著者名/発表者名
      杉本俊介
    • 学会等名
      本経営倫理学会9月研究交流例会
    • 招待講演
  • [学会発表] 経営理念に表れる日本企業の徳──テキストマイニングを用いて──2022

    • 著者名/発表者名
      杉本俊介
    • 学会等名
      日本経営倫理学会第30回研究発表大会

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公開日: 2023-12-25  

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