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2020 年度 実施状況報告書

流派形成史から見るインド密教における観想法の構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K12946
研究機関東北大学

研究代表者

松村 幸彦  東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (70803071)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード自加持 / 聖者流 / へーヴァジュラ / 究竟次第 / アーリヤデーヴァ
研究実績の概要

本研究は、インド密教における究竟次第的観想法の構造を解析し、父タントラと母タントラ両系統の影響関係に焦点を当てながら、インド密教の形成過程を明らかにするための有益な一つの知見を提供することを目的としている。その上で、その影響関係がうかがわれる父タントラ系を代表する聖典の一つ『秘密集会タントラ』聖者流と母タントラ系へーヴァジュラ系の観想法に着目し、それぞれの儀礼構成を解析し、究竟次第の構造の比較考察を行う作業に取り組んでいる。
当該年度は、以上の目的を踏まえた上で、前年度に引き続き父タントラ系聖者流の究竟次第の解析作業を行った。中心に採り上げたのは、アーリヤデーヴァ著『スヴァアディシュターナプラベーダ』である。同テキストの観法の構造の整理・解析を行い、その内容理解を容易にするためのシノプシスの作成を行い、テキストに説かれる儀礼ユニットの構成状況、観法の内容を整理した。それを行う上で、同テキストはすでにトランスリテレーションテキストが存在するが、サンスクリット写本とチベット語訳を適宜参照しながらテキストの確定、および内容の読解、訳注作業を行った。
同テキストは「自加持」と言われる究竟次第的な観法を扱うテキストであり、以上の作業によって、同じく聖者流の五次第『パンチャクラマ』所説の自加持次第や、アーリヤデーヴァ著『チャルヤーメーラーパカプラディーパ』との比較考察作業の一助となるため、本研究でも重要な位置を占める。今年度採り上げた自加持と呼ばれる名称の観法は、へーヴァジュラ系の五次第『へーヴァジュラプラカーシャ』にも一次第として説かれているため、次年度に、共通の用語を用いる聖者流とへーヴァジュラ系の観想法を比較考察する上で必要不可欠なものであった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度の研究では、トランスリテレーションテキストおよびサンスクリット写本とチベット語訳を用いたアーリヤデーヴァ著『スヴァアディシュターナプラベーダ』のサンスクリットテキストの確定とそれを用いた訳注作業を行うとともにそのシノプシスの作成を行い、観法の構成を整理した。そのほかに、それを用いた『チャルヤーメーラーパカプラディーパ』やシャーキャミトラ著とされるその註釈書、そして『パンチャクラマ』といった関連テキストとの平行箇所の検索と相違する箇所との比較作業を行った。さらにはそれによって明確化されたアーリヤデーヴァの説く儀礼内容と、前年度に行った作業結果との比較考察に取り掛かった。しかし、『スヴァアディシュターナプラベーダ』は60偈で構成されその内容が完結でありながらも、チベット語訳との関係からテキストの確定に慎重を期す箇所もあり、さらには『チャルヤーメーラーパカプラディーパ』の註釈であるシャーキャミトラ著『チャルヤーサムッチャヤプラディーパ・ナーマ・ティーカー』はその著者が『アヌッタラサンディ』の著者であるシャーキャミトラと同一人物がどうか疑義があることから、その註釈内容の扱いも慎重に検討をする必要があり、想定以上に訳注、および比較考察作業に時間を要した。
更に、今年度は全世界的な新型コロナウイルスの流行によって研究環境が一時的に制限されてしまったことや、下半期以降、申請者の前職の退職に伴う生活・研究環境の変化によって思うような研究時間が確保できなかったため、当初の計画を修正せざるを得なかった。

今後の研究の推進方策

次年度は、今年度の作業を引き続き実行し、それが終わり次第、今年度予定している聖者流と母タントラ系であるへーヴァジュラ系の説く究竟次第的観想法の比較を行い、その影響関係を探る。その際に採り上げるへーヴァジュラ系文献は『ヴァジュラプラディーパー』や『へーヴァジュラプラカーシャ』を中心とし、それらとの平行箇所の検索や観想法の構成やその比較作業を行う。また、以上の作業を行う上で、チベットの学僧プトンやパクパなどが著した相承系譜資料も適宜活用する。それによって聖者流やへーヴァジュラの伝統を伝えた学僧たちの活動年代を明確にすることが可能となるとともに、チベットへの教義の受容状況を明らかにすることにも繋がってくると考えられる。以上によって、父タントラと母タントラの影響関係に焦点を当てた、究竟次第を中心とするインド密教の観想法の儀礼構成に関してまとめる。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、全世界的に新型コロナウイルスの流行が起こり、そのため発表予定であった学会が軒並み中止・延期になったことや、調査で赴く予定であったドイツなど海外への渡航ができなくなったことが大きく影響し、次年度使用額が生じた。

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公開日: 2021-12-27  

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