研究課題/領域番号 |
19K12947
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川本 佳苗 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携講師 (40781688)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミャンマー / 仏教瞑想 / パオ瞑想 / サマタ / 禅定 / ヴィパッサナー / 上座部仏教 / パーリ三蔵 |
研究実績の概要 |
コロナウィルス感染防止の活動自粛により、調査報告にも遅れが生じている。そのため、複数の執筆や口頭発表が叶わなかった。 出版業績としては、2020年10月25日に出版された『サンガジャパン』36号(ISBN4865641777、サンガ)に、研究の現状報告となる「パオ瞑想法におけるサマタ瞑想―心を照らす光明」(pp208-224)を寄稿した。本誌は学術誌ではなく商業誌であるが、仏教瞑想に関心をもつ一般の日本人読者に向けて、近年実践者を増やしつつあるパオ瞑想について概説した最初の日本語記事となった。本稿の構成としては、前半でこれまで日本語ではほとんど知られていなかったパオ長老の生い立ちや独自の瞑想法を確立する至るまでの過程、また日本へ紹介された経緯などを概説した。後半ではパオ瞑想法実践の特徴に注目し、インタビュー調査から得た発言を資料に用いた。2019年8月にミャンマーでパオ長老と対面した際の質疑応答と、日本で実施したパオ瞑想指導者である尼僧への質疑応答とを引用し、いかにパオ瞑想指導者がサマタ瞑想を重視しており、かつサマタ瞑想によって禅定に到達することを必須であるとみなしているかという根拠を明らかにした。彼らが解釈するサマタ、禅定、ヴィパッサナーなどの境地は、今日普及しているヴィパッサナー瞑想を中心とした仏教瞑想の実践とは大きく異なることが分かった。さらに重要であることは、パオ瞑想指導者達がそのようなパオ仏教瞑想の実践をパーリ仏教文献に忠実に即した結果に得られた方法であると堅く信じている点である。この根拠についてもインタビューでは聴き取りしたが、本稿内では手短に言及するに留まったため今後の論文執筆では詳説したい。 その他、2020年9月日本宗教学会の年次大会にて「現代日本における仏教者の取り組み」を口頭発表する予定であったが、コロナ禍のため研究に遅れが生じたこととリモート発表に懸念を持ったため、発表を取り止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年においてはコロナウィルス感染防止のための活動自粛により、ミャンマーへの現地調査が叶わなかった。その代替作業として、2019年度に渡航した際に収集したミャンマー語文献の翻訳および国内調査を集中的に行った。 翻訳を進めた文献は、パオ長老の伝記と呼吸瞑想の概要についてミャンマー語で執筆された文献である。また主要な参考資料ではないが、ミャンマー仏教瞑想実践の論拠として価値を置く『アビダンマ』について在家仏教徒向けに書かれたミャンマー語冊子(ナンダマーラヴィヴァンサ長老著)も翻訳した。 国内調査としては、9月と11月に関東を中心に活動する有志団体の瞑想会に参加し、参与観察および日本人参加者へのインタビュー調査を行った。また、2021年1月に同団体が開催した自主瞑想合宿において、ミャンマーの僧院にいる瞑想指導者とインターネットを経由して法話会および瞑想者との面談が行なわれたため、通訳を務めるとともにオンラインによる瞑想修行の実践を調査した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス拡大の危険により、2020年8月に予定していた約1ヶ月間のミャンマー現地調査を行うことができなかった。仮にコロナウィルスの感染状況が沈静化したとしても、2021年2月にミャンマー国内で発生した軍事クーデターの状況から今年度中の入国は不可能に近いと思われる。 そこで、ミャンマー内での参与観察およびインタビュー調査データは2019年に収集したもののみを用いて、現在継続中の日本国内での調査とともに比較・分析し、調査結果を明らかにしたい。 また、文献調査の点に関しては、『アビダルマ』および『清浄道論』などのパーリ語仏教文献、パオ長老やパオ仏教瞑想指導者の著書を用いて、パーリ仏典に記される思想をパオ仏教瞑想がどのように解釈し実践に応用しているかという分析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主要な理由は、新型コロナウィルス拡大の危険から海外渡航が叶わず、ミャンマーでの現地渡航費を使用しなかったことによる。国内においても関東地域に長期に渡り緊急事態宣言が下され、国内調査をすることもできなかった。従って、旅費を用いることが年度内において一度もなかった。 2021年度内においても、コロナ禍においていまだ海外渡航する可能性が低いため、旅費は主に国内調査費に使用される予定である。 また、本研究課題は令和3年度で終了を予定していたが、コロナウィルス感染防止の影響により、進捗が大幅に遅れている。従って、令和4年度にも1年間延長することを検討している。
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