研究課題/領域番号 |
19K12951
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
西沢 史仁 立正大学, 法華経文化研究所, 研究員 (50646643)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | チベット中観思想 / 二諦説 / 初期チベット人学者 / サキャ派 / シャーキャチョクデン / コラムパ |
研究実績の概要 |
2019年度は,主要な研究対象である初期チベット人学者(ゴク翻訳師,トルンパ,ギャマルワ,チャパ,パツァプ翻訳師等)の二諦説研究の端緒を掴む為に,後代のサキャ派の中観論書に言及された初期チベット人学者の二諦説に関連する記述を収集し,かつ,それを原典資料に同定する作業に集中した.具体的には,サキャ派顕教教学の確立者として知られているシャーキャチョクデン(1428-1507)の『中観決択』(dBu ma rnam nges)とコラムパ(1429-1489)の『中観総義・了義解明』(dBu ma'i spyi don Nges don rab gsal)を資料として,そこに言及されたゴク翻訳師(1059-1109),ギャマルワ(ca. 1080-1150),チャパ1109-1169),パツァプ翻訳師(1055-1140-?),ツァンナクパ(12c.)等の初期チベット人学者の二諦説に関する記述を検討した.その研究成果は,「初期チベット人学者の二諦説:後期サキャ派の中観典籍を資料として」として『インド論理学研究』12(2019年度刊行予定)に掲載予定である. さらに,初期チベット人学者の二諦説が如何に後代に伝承されていったのかということを概観する為に,サキャ派の聴聞録や一連の伝記文献等を資料として,サキャ派における中観説の学統を分析したが,これは,「サキャ派中観思想史研究序説 ― 師資相承の系譜の分析を中心として」として『真宗総合研究所紀要』66(2020年3月)に刊行された.加えて,シャーキャチョクデンの『中観思想史』から,チベットにおける中観説の歴史的展開を述べた箇所の訳注研究を行なった.これは,「チベット中観思想史研究序説 ― シャーキャチョクデン造『中観思想史』を資料として ―」として,『大崎学報』176(2019年度出版予定)に掲載予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では,ギャマルワの『二諦分別論註』の読解作業から着手する予定であったが,実際に着手した所,予想以上に難航したため,計画に一部変更を加え,ギャマルワを含む初期チベット人学者の二諦説に関する概要を得る為に,後代のサキャ派の中観論書に言及された初期チベット人学者の二諦説に関する情報収集とその原典資料への同定作業を最初に遂行した.これは次年度以降に行なう予定であったが,その計画の前倒しを行なったことになる.それ以外は,その研究成果も三つの論文に纏めることが出来,総じて研究の進捗は順調であると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
記の通り,研究計画に一部変更を加えたので,次年度は,ギャマルワの『二諦分別論註』を始めとする初期チベット人学者の中観論書の原典研究を行なう予定である.加えて,今年度から着手したサキャ派の中観論書から後代のサキャ派の二諦説についても,同時並行的に研究を進めることを検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主要な理由は,当初参加計画していた西寧で開催予定の国際ツォンカパ学会が急遽開催中止になったことと,パリで開催予定であった国際チベット学会参加をキャンセルしたためである.その金額は当科研研究の成果発表としての出版費等に充当することを検討している.
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