研究課題
最終年度である本年度は、『有為無為決択』第十章の読解に取り組んだ。これと並行して、すでに研究を完了した第九章のチベット語訳校訂テキスト(前半部)を『国際仏教学研究所紀要』5に発表した。また同章の典拠である『中観五蘊論』の著者問題に取り組み、その成果を『印度学仏教学研究』71-3に発表した。さらに『有為無為決択』と同じ系譜に属する『牟尼意趣荘厳』の翻訳研究に、李学竹(中国蔵学研究中心)と加納和雄(駒澤大学)の両氏と取り組み、『有為無為決択』との関係を考察するとともに、器世間解説後半部の和訳を『インド学チベット学研究』26に発表した。また、本研究で得られた知見を背景に『阿毘達磨集論』の共同研究に参加し、その成果を研究会での共著として『インド学チベット学研究』26に発表した。これらの論文に加えて、本研究で得られた成果の一部を学会等で発表した。このように本研究では、ダシャバラシュリーミトラ(1100-1170年頃)の『有為無為決択』(チベット語訳のみ現存)を用いて、基礎学としてインド仏教最後期に伝えられた説一切有部の教理の具体的な内容を明らかにした。また、その伝承の系譜や大乗仏教からの影響の一端を解明した。現在では得られた成果を論文として発表する段階になったが、和訳等では下書き原稿から論文にまとめるのに予想以上の時間を要している。また今年度末には、新たな研究機関への移動が決まり、その準備に予定にない時間と労力を要した。当初の予定では同論が説く有部説全体(第二章~第十二章)を読解する予定であったが、上記の理由から最後の二つの章については扱うことができなかった。また発表を予定していた第三章の和訳も作業を完了できなかった。プロジェクト期間が終了した後も研究を継続し、成果を順次発表してゆきたい。特に主要テキストの該当箇所の読了と和訳・テキストの発表は喫緊の課題として取り組みたい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
印度学仏教学研究
巻: 71-3 ページ: 129-134
Bulletin of the International Institute for Buddhist Studies
巻: 5 ページ: 81-97
インド学チベット学研究
巻: 26 ページ: 24-38
巻: 26 ページ: 39-85