研究課題/領域番号 |
19K12954
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
喜田川 たまき (渡邉たまき) 筑波大学, 地中海・北アフリカ研究センター, 研究員 (50721685)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 植物の象徴性 / 食と薬の宗教的意味 / 文化の多層性 |
研究実績の概要 |
1. 文献収集:国内で入手可能な文献を収集し調査を進めた。調査においてみられるオリーブなどの食薬植物をめぐる慣習と、前イスラームの信仰との関連を調べるため、古代地中海世界における女神信仰、とくにカルタゴとの交易を通じて影響力が確認されているフェニキア及びクレタの信仰世界について資料を集め、北アフリカの植物をめぐる信仰・宗教的慣習をその古層から解釈する基盤的情報を得た。
2. 現地調査:令和元年8月に南部モロッコを訪問し、ハッサン二世農獣医大学およびオアシス・アルガン地域開発機構の協力を得て、アガディール県、エッサウィラ県の女性協同組合を中心に予備調査を行った。調査地では質問票を用いた聞き取り調査、及び聖地の参与観察を行った。大規模な農業の近代化が進んでいない南部モロッコでは、北部地域に比べて食薬植物に関するより豊かな信仰体系、宗教的慣習が保存されていることが確認された。また、11月にチュニジア中部のスース県において現地調査を行った。調査ではオリーブの伝統的な民間薬の製法およびその使用について、参与観察と聞き取り調査を行い、その薬効に含まれる象徴的意味の解釈を行うことが可能となった。
3. 調査データ分析、発表:現地調査で得られた情報を整理するとともに分析を行い、The European Conference on Ethics, Religion and Philosophy 2019、およびTunisia Japan Symposium on Science, Society and Technology 2019 において発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の予定通り2回の現地調査を実施しており、調査は順調に進展している。アルジェリアともアルジェの人類学歴史研究所との連絡を始めており、調査準備は進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は前回の予備調査を踏まえてモロッコ南部での本調査とアルジェリアでの予備調査を行う予定であったが、1月に発生した新型コロナウィルスの世界的な感染拡大に伴い、現在北アフリカ各国やトランジット地である欧州各国などへの立ち入りが制限されているため調査実施の見通しを立てることが困難な状況である。そのため、本年度は資料の収集と、これまでに得られた調査データと資料データを基にした論文執筆を中心に行うこととする。またコロナウィルスの感染が終息し、安全に渡航が可能になり次第、現地調査を再開する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現地調査に当たっては研究代表者が参画している別経費をもって行ったため、今年度の旅費に余剰が出た。 次年度予算と合わせ、次年度以降における現地調査と海外での学会参加費として充当する予定である。
|