研究課題
若手研究
本研究は、特に古代世界のユダヤ‐キリスト教関係において、両者が互いをどのような存在として定義し、描写してきたのかに着目して分析を進めてきた。主にコロナ禍の影響で当初の計画より分析範囲の縮小を余儀なくされたが、シリア教父と同時代のユダヤ人/ユダヤ教については集中的に取り組むことができた。明確な成果としては、例えばシリア教父が「ユダヤ人」に言及する際に、その「ユダヤ人」の定義や行動は著者であるキリスト教徒にとって都合のいいものであり、その境界は恣意的に変動しうるということである。
ユダヤ学
そもそも西方キリスト教に比べて扱われることの少ない東方キリスト教を中心的な題材として、その枠組みを疑うところからユダヤ教との比較を行うという点に新規性がある。またそれは本研究の成果を受けて改めて西方キリスト教にも投げかけてみるべき問いでもある。そして共同体の定義づけが時に任意に行われるという本研究の結論は、古代のみならず現代の人間関係も含め他の隣接分野にもそのまま適用可能な知見である。