本研究は、まず、第二神殿時代における「異邦人の穢れ」概念の形成と、捕囚後イスラエルのアイデンティティの確立の関連を明らかにした。次に、第二神殿時代ユダヤ教において、自然界の秩序と神の律法を重ねる認識が、後に第二神殿時代ユダヤ教から分岐して成立したキリスト教の異邦人受容の基盤となった可能性の考察へと進んだ。「他者の受容」と恐らく表裏一体の過程としてある「他者」概念そのものの成立について、「キリスト教形成期における『他者』の実態:共生の地盤としての異邦人」(2022~2025年度)で発展的に継承しつつ、原始キリスト教のアイデンティティ形成における、「異邦人の穢れ」概念消化の内的根拠を分析した。
|