研究課題/領域番号 |
19K12965
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
淵田 仁 城西大学, 現代政策学部, 助教 (00770554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 啓蒙思想 / 歴史記述 / 事実認識 / 経験論 / レトリック / 認識論 |
研究実績の概要 |
2020年度は、前年度の成果を論文公開し、かつ引き続きテクストの読解を進めた。内容としては、ディドロ執筆『百科全書』項目「事実fait」の分析を論文にて発表した。本論文は経験主義哲学が拡大していく 18 世紀フランスにおいて「事実」というありきたりな言葉にどのようなコノテーションが存在したのかを明らかにすることを目指した。とりわけ、ドゥニ・ディドロが執筆した『百科全書』項目「事実」に焦点を当て、そこで何が賭けられているかを明確にすることで、事実を巡る言説空間を広がりを知ることができた。ディドロの項目「事実」から、我々は 17 世紀から議論されてきた考証学的方法論がある意味無効化される危機的契機をディドロ自身が察知していたことを知ることができた。その危機とは事実が公共的手続きから構成されるものであるという考えからすべてが個人の信念体系へと回収されてしまう、というポスト・トゥルース的なものと言えよう。 また前年度同様、ニコラ・ベルジエの反啓蒙主義的テクストの読解を進め、彼の『神学事典』においてディドロの事実観とどのような差異があるかを検討した。しかし、コロナ禍のため2020年度は国外での資料調査を実質することができず文献渉猟はあまり進まなかった。 新しくルソーの『エミール』草稿研究も進め、一部を論文で発表した。『エミール』内の物語内物語である「サヴォワ助任司祭の信仰告白」では出来事の事実性を高めるレトリックやテクスト戦略が幾重にも展開されており、ルソーの草稿を比較検討することでその意図がある程度読み取れることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では渡仏し、現地の研究者との情報交換や資料調査を実施する予定だったが、コロナの影響で叶わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後もおそらく海外での資料調査等は難しいことが予想されるため、本研究では日本で手に入る文献資料を元に成果を挙げることに集中したい。 ベルジエの事実概念について包括的にまとめていき、啓蒙思想のなかでどのような論点が論争の中心にあったのかを判明することが今後の研究の目指すべき課題になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため学会出張がなくなり、次年度使用額が発生した。次年度で出張が可能になれば、その際に使用予定である。
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