研究課題/領域番号 |
19K12967
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
久山 雄甫 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (70723378)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゲーテ / ガイスト |
研究実績の概要 |
本年度は以下の5点について研究を進めた。 1.ゲーテ晩年の思想詩に見られる「世界ガイスト(Weltgeist)」と「世界魂(Weltseele)」の語について、2017年6月にヴァイマル・ゲーテ協会で行った発表を論文化した。Goethe-Jahrbuchに掲載された本論文では、これら二つの言葉は何らかの意味を指し示しておらず、むしろ「言わなかったこと(das Ungesagte)」としての空所になっているという解釈を提示した。 2.『ファウスト第二部』に登場する人造人間ホムンクルスについての文献を調査・考察した。ホムンクルスは身体をもたないガイストのみの存在であって、身体を得ようと太古のエーゲ海に飛び込んで悠久の生命史をたどりなおす。この場面を独自の視点から再検討し、ホムンクルス劇の全体を「ガイストの脱中心化」を描く文学として読み解いた。さらにそこから、ゲーテ晩年の作品では主体としてのガイストそのものではなく、むしろガイストを取り巻く環世界が重視されている可能性を見出だした。 3.ゲーテと自然哲学者トロクスラーの関係を整理した。ゲーテの形態学論文には、トロクスラー『人間の本質を見る眼差し』からガイスト概念にまつわるテーゼが引用されているが、その位置づけはきわめてアンビバレントである。Coincidentia誌に掲載されたドイツ語論文で、ゲーテ形態学がトロクスラーの神秘的な自然哲学を、一方では批判しつつ、他方では巧みに利用していた可能性を指摘した。 4.ゲーテの地学研究に見られる時間感覚について「世界の時間化」との関連を探った。ヒューマン・スケールを超えた時間感覚の意義を解明する手がかりが得られると考えている。 5.ガイスト概念に関する派生的テーマとして、ゲーテの世界文学の理念についての研究に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、2020年3月に予定していた2件の海外出張(ドイツでのシンポジウム招待講演およびアメリカでの共同研究)が延期になった。(いずれも今後の推移によっては中止となる可能性がある。)これにともなって対外的には計画していた業績をあげることができなかった。ただし代わりに自宅待機中でも遂行できる研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、当面のところ海外出張はもちろん、国内の図書館での資料調査なども困難となっているため、手元の資料で継続できる研究を優先的に行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に予定していた海外出張が新型コロナウイルスによる感染症拡大のため延期になったため。
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