研究課題/領域番号 |
19K12968
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
浅井 雅 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (80782010)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 儒学の「学問」化 / 藩儒の社会的位置付け / 文芸ネットワーク / 龍野藩 |
研究実績の概要 |
本研究は、①藩主として身に付けるべき教養のうちの儒学の位置付けの変遷、②近世初期の大名の文芸ネットワークと儒学の諸藩への伝播、③藩に仕えた特殊技能者の登用に占める儒者の社会(階層)的な位置付けの変遷の3つの側面から、近世日本において初期には「文芸」と捉えられていた儒学が、いかに武家社会において「学問」化していったか、その過程の社会的実態と歴史的意義の解明を行う。 2019年度は、③の研究課題のうち、龍野藩に仕えた特殊技能者の登用に占める儒者の社会(階層)的な位置付けの変遷を明らかにする目的で、対象となる史料『諸氏略系』全7巻・『脇坂家無足諸士略系』全10巻(共に龍野歴史文化資料館蔵)を収集した。また、この史料から、特殊技能者・芸能者(能楽者・茶道方・儒者・洋学者・軍師・国学者・医者・坊主など)などのキーワードによって、人物ごとにその履歴を抽出し、時期による人数や待遇について分析している。今後さらに、この分析をもとに、儒者の藩社会における影響力を考察する。 また、研究実施計画においては、2019年度中に②近世初期の大名の文芸ネットワークと儒学の諸藩への伝播の関係をも明らかにする目的で、龍野藩脇坂家2代・脇坂安元(八雲軒、1584~1653)の日記『下館日記』及び脇坂安元と文芸上の付き合いがあったことがわかっている幕府の儒者林羅山(1583~1657)の関係史料の中から文芸・芸術(和歌・連歌・能楽・謡・儒学など)に関する記事と大名同士の横の関係をはじめとする人間関係を抽出し、分析する予定であったが、こちらは、史料は収集済みまたは所在確認済みであるものの、分析が遅れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
私的な事情で申し訳ないが、2020年1月に出産したため、2019年度のほとんどが妊娠中であり、妊娠後期から妊娠高血圧症候群等の不慮の体調不良も重なり、快復に時間がかかった。また、新型コロナウイルスの拡大により、上の子たちの休校等もあり、計画より研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に遅れている研究を進めつつ、2020年度の研究実施計画の通り、③の研究課題のうち、鳥取藩に仕えた特殊技能者の登用に占める儒者の社会(階層)的な位置付けの変遷を、鳥取藩の『藩士家譜』全1606冊、『侍帳』全37冊ほか(すべて鳥取県立博物館蔵)により、明らかにする。また、2019年度に明らかにした龍野藩の事例との比較・検討を行う。 さらに、藩主・世子の学問の実態を守役となった人々の日記(『御用人日記写』117冊〈1661~1787〉、『御用人日記』306冊〈1670~1757〉〈共に鳥取県立博物館蔵〉)により明らかにし、藩主として身に付けるべき教養に変遷があったかどうかを考察する。 また、それぞれの課題について、研究報告を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、妊娠・出産による研究の遅れで、研究成果を発表する機会が設けられなかったため、2020年度は(コロナ感染拡大の状況にもよるが)、昨年分も研究成果報告の機会を得たい。また、申請より交付決定金額が少なかったため、パソコンの購入を見合わせ、以前購入したパソコンを使用しているが、最近調子が悪いため、2020年度または来年度中には購入の必要が出てきそうである。
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