研究課題
若手研究
本研究課題では、江戸期における藤樹学派や世間で出回っていた書簡集や諸著作を調査することで、同時代に「中江藤樹の教え」がどのように共有されていたのかを分析した。結果、ほとんどの書簡集の写本が同系列の写本、もしくは刊本であった。個別具体的にまとめられた書簡集はなく、藤樹学派内で共有されていた書簡集と、出版されて世間に流布していた刊本とがあったのであり、学派内の学びの同質性を示唆する結果となった。
日本思想史
現代の我々は、『全集』など校訂を経たまとまったテキスト群から読み取れるものを読み解こうと試みる。そのようなアプローチからでは、パッケージ的に「思想」を理解してしまう危険性がある。本研究課題が明らかにしたように、どのような媒体で江戸期を通じて継承されたのか、というところを改めて解きほぐして各テキストの特徴を捉え直そうとしたところに、儒学思想研究における学術的意義と社会的意義がある。