最終年度である2022年度は、研究題目にある「パラケルスス主義と偽パラケルスス文書」および「終末論」について、パラケルスス主義者オズワルド・クロル(『Basilica Chymica』 1608)の終末論と、そこにおける偽パラケルスス文書『De tinctura physicorum』の影響にかんする研究を進めた。これについて2023年3月の米国ルネサンス学会 (Renaissance Society of America)の年次大会(サン・フアン市)にて発表報告を行った。 また、一昨年から引き続いて進めてきた、偽パラケルスス文書群と真正文書 『Liber de nymphis』との比較および後世の受容史の調査について、2023年6月にバーゼルで開催される国際シンポジウムで発表予定である。また『Liber de nymphis』については翻訳作業が進められており、2023年末または2024年春の刊行を目指している。 なお、今年度は新たに研究代表者を務める科研事業「中世・近世イスラム圏と西欧における『魔術的知』の交流史」(22H00610)がスタートした。本研究題目とも密接に関連するテーマを扱っているため、本研究事業は発展的にこの新規科研事業に接続していくことになった。具体的には、2022年9月に新科研事業によるワークショップが京都大学人文科学研究所で開催されたが、そこでの研究発表には本研究事業の成果(特に偽パラケルスス文書『De natura rerum』について)が反映されている。これの日本語論文の執筆が進んでおり、これについても、2023年末から2024年春の刊行を目指している。 最後に、本研究題目の一部をもとにした百科事典項目2点がすでにオンラインで公開されていたが(R2年度 研究実施状況報告書)、この百科事典が2022年7月にプリント版として刊行された。
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