研究課題/領域番号 |
19K12979
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
神竹 喜重子 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 研究員 (70786087)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地方歌劇場 / オペラ / 普及 / 移動 / 循環 |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナ感染拡大の影響で予定していた国際学会のほとんどが中止となり、また海外に資料調査に行くこともできなかった。そのため、2019年度に収集した資料でまだ精読できていなかった部分を中心に、精読に努めるようにした。 2019年11月のキエフ、モスクワへの資料調査の成果を取りまとめ、オペラ/音楽劇研究所の企画書籍『オペラ/音楽劇研究の現在―創造と伝播のダイナミズム』(水声社刊)に寄稿した。コロナ禍の影響もあったが、今年3月に刊行された。その内容は、19世紀末のロシア・オペラ界における、ロシア帝国内地方都市の歌劇場の役割についてである。これまでロシア・オペラ界は首都>地方の構図で語られてきただが、必ずしもそうではなく、寧ろ地方の歌劇場がオペラ作品の普及に際して能動的な役割を果たしてきたことを論じた。その一例として、1892年におけるキエフでのモデスト・ムーソルグスキイの《ホヴァーンシチナ》の舞台初演を取り上げた。このオペラは長らく帝室劇場のレパートリーから除外されていたが、キエフでは既に受容基盤が早くから整っていたのである。これに鑑み、キエフにおける舞台初演に関わったセートフ私立オペラ団員が、その後モスクワに移動したことにより、主要都市で《ホヴァーンシチナ》が普及したことを述べた。なお、同論文の取りまとめに際して、セートフオペラ団員のキャリア(出身地、教育、所属歌劇場など)に関するデータベースも作成した。 国内学会では、日本ロシア文学会にて研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度に予定していた資料調査ができなかった。ただ2019年度に収集した資料を引き続き精読し、セートフオペラ団員のキャリアに関するデータベースを作成したところ、新たな課題が見つかった。(詳しくは【今後の研究の推進策】に記述する)
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今後の研究の推進方策 |
作成したセートフオペラ団員のキャリアに関するデータベースをもとに、個々のオペラ団員の地方都市と主要都市間での移動、また他のオペラ団員の移動との連動性、さらには《ホヴァーンシチナ》をはじめとする帝室劇場のレパートリーから除外されていたオペラ作品の普及との関係を分析する。 1911年、1912年に帝室劇場で《ホヴァーンシチナ》が取り上げられるようになった経緯について、帝室劇場内部で起きた変化、地方歌劇場及びモスクワ私立歌劇場のオペラ上演による影響について調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で海外に資料調査に行けなかったため。次年度に必要な物品購入、旅費に充てるつもりである。
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