研究課題/領域番号 |
19K12983
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
井奥 陽子 東京藝術大学, 美術学部, 研究員 (60836279)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 初期近代 / 啓蒙主義 / ヴォルフ学派 / バウムガルテン / カント / poeta vates / 予言 / 迷信 |
研究実績の概要 |
2022年度は哲学・神学・科学史における占術の歴史について考察し、占星術を代表とする占術が近代に学術の外へ追いやられていった道筋を辿りつつ、本研究が対象とするヴォルフ学派の位置付けについて見通しを示した。2023年度はさらに、美学史の観点から検討を加えた。具体的には、占術と芸術の接点として注目すべきpoeta vates(予言者としての詩人)という思想について、古代~近代までの系譜を辿った。この思想はロマン主義でおおいに復興・流行するが、他方で18世紀半ばのバウムガルテンのテクストには、この伝統に対して否定的な記述が見出される。これをたんにロマン主義がその反動となるような近代合理主義として片付けるのではなく、占いを脱神秘化することで学問へ取り込もうとする積極的な企てとみなすべきであろう、という見解を示した。以上の成果は3月に研究会で発表した。 また、バウムガルテンの美学は一般にカントによる批判を通して理解されていることから、カントによるバウムガルテン批判を改めて検討した。具体的には、完全性と合目的性およびそれらについての「形式」の概念を中心に、両者の根本的な立場の違いに由来する相違点を整理したうえで、それにもかかわらずカントはヴォルフ学派を受け継いで概念を形成したことを指摘した。以上の成果は10月に学会シンポジウムで発表した。 さらにタロットの歴史について二次文献を整理するなかで、たんなる遊戯カードであったタロットが神秘的な占いに変貌する時期がちょうど本研究の対象とする18世紀後半であることに注目した。そこから、タロットが神秘化された契機としてアレゴリーという芸術表現の形式があるのではないかと考え、美学史ではちょうどアレゴリー批判が生じた時代であるということも勘案しつつ、この表現形式について考察を加えた。この見解は書籍へのコラムの寄稿というかたちで公表した(2024年刊行予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度も新型コロナウイルス感染症の影響が残存し、また国際情勢の緊張などから、国内外での研究活動の停滞が余儀なくされた。研究内容としては、カントとバウムガルテンの比較研究について、本研究にとって重要な予見能力論にまで踏み込むことができず、この点に課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の2つめの柱である、予見能力論の考察に注力する。ヴォルフ、ビルフィンガー、バウムガルテン、マイアー、カントを中心に調査し、適宜その他の周辺の思想家にも目を配る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響の残存および申請者の育児により、当初予定していた旅費の使用がなくなり、図書の購入費も予定より少なく抑えられたため、次年度使用額が生じた。使用計画については、海外旅費、図書購入費、パソコンの購入にあてる予定である。
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