研究課題/領域番号 |
19K12986
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研究機関 | 昭和音楽大学 |
研究代表者 |
越懸澤 麻衣 昭和音楽大学, 大学院音楽研究科, 講師 (10755375)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 音楽学 / 洋楽受容 / 楽譜出版 / ベートーヴェン |
研究実績の概要 |
2020年度は明治・大正時代に日本で出版された楽譜について、ベートーヴェンの楽譜を中心に調査した。とくに注目したのは「月光ソナタ」(《ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調》Op. 27 No. 2)についてである。 ベートーヴェンが盲目の少女のためにこのピアノ作品を作曲したことは(まったくの作り話であるにもかかわらず)、日本ではまずは英語の教科書を通して知られていた。日本で最初に出版された楽譜の解説ページにもそのエピソードが周知のこととして記されている事実は、「月光」という作品が音そのものではなく言説によって人々に伝えられたことを意味する。つまりヨーロッパでは楽譜が伝えられることによって演奏され、その音楽作品が広まってゆくが、日本ではまず文字情報によってイメージが形成され、その後実際の鳴り響きを理解するという流れになっていることが、楽譜の意味の違いとしてたいへん興味深い。 そのことと関連し、ヨーロッパでは第1楽章のみが単独で出版されたり演奏されたりと、「月光ソナタ」のロマンティックなイメージを形成したが、日本における月光のエピソードは特定の楽章を想起させるものではなく、また出版される楽譜も全楽章を通してのものである、という違いがある。大正時代には、人気のある音楽の旋律は絵葉書として売り出されたが、「月光」は第2楽章の旋律が書かれたものを確認できた。 このような研究の成果は、ルッカ、北京、ソウルの機関で主催されたオンライン学会での発表の一部となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヨーロッパにおける楽譜出版事情と比較するため、ドイツの図書館で調査をする予定であったが、渡航できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ベートーヴェン作品がどのような脈絡で出版され、その他の音楽文化とどう関連していたかを精査するとともに、同様の調査を他の作曲家についても行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツでの資料調査ができず、旅費の支出が減ったため。
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