研究実績の概要 |
本研究は1910~20年代の日本、アメリカ、ドイツにおいて、無声映画がどのように上映されていたのかを、伴奏音楽に着目して明らかにすることを課題として、2019年度より研究を実施してきた。期間内にドイツ・オランダ等の無声映画関連資料の調査・収集を進めたほか、2019年度には、UCLAに所蔵されているアメリカ発行の伴奏用例集(キュー・シート)のデータ入力など基礎的な調査を行った。 こうした調査に基づく研究成果は、2021年3月に刊行した『世界は映画でできている』(共編著)や、名古屋外国語大学での学術イベント等で広く公開した。同時に、2019年度のアジア・ゲルマニスト会議(北海学園大学)、国際図像学会年次大会(タスマニア大学)、2022年度の国際音楽学会大会(アテネ大学)など、内外の学会での成果発表を継続している。 2023年度は、共編著を務めた一般向け学術書籍『ベートーヴェンと大衆文化』(2024年、春秋社,沼口隆、安川智子、斎藤桂との共編著)での寄稿論文で、音楽家・ベートーヴェンが1920~30年代の映画においてどのように描き出されたのか、その流通の過程を論じた。また10月の国際音楽学会東アジア分科会における口頭発表(英語)や、The Routledge companion to global film music in the early sound eraでの寄稿論文(英語)では、日本における事例を中心に広くその成果を発表した。くわえて、研究期間終了後のさらなる成果発表へ向けて共編著の学術書籍の企画などを進めている。 今後は、本研究課題を通して形成したネットワークを活用し、映像音響研究の基礎的成果を学界および一般に向けて広く発信し定着させていく。映画学・音楽学にとどまらず、グローバル史、記憶研究、さらに地域研究や思想史とのつながりを意識し、研究領域の広がりと深化に貢献したい。
|