研究課題/領域番号 |
19K13001
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上枝 いづみ 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (40727880)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 仏伝美術 / ガンダーラ美術 / 西北インド / 仏教文化史 / 仏伝 / 仏伝文献 |
研究実績の概要 |
本研究は、インドにおける仏伝美術の変遷の中で、1世紀中頃から3世紀頃にかけて西北インドのガンダーラ地方で隆盛した仏伝美術の独自性に着目し、ガンダーラにおける仏伝美術の「変容」の過程を具体的に跡付けることを目的とし、その達成のため、ガンダーラの仏伝浮彫の(1)資料集成と地域毎の特徴の抽出、(2)全体構成の復元的研究、(3)仏伝主題の図像学的研究という3つのアプローチを用いている。 後述のように、本年度も海外・国内調査や発表機会の延期があり、また、研究代表者の産休・育休による研究中断のため当初の計画から遅れが生じているが、下記のように研究を進めた。 (1)の資料集成に関して、作例調査は延期したが、引き続き、初期発掘報告書等を精査し、ガンダーラ美術の作例を所蔵する世界各地の博物館図録をオンラインデータを含めて改めて整理し、これらの情報を集成に加え、集成をより精緻にすることができた。関連して(2)の復元的考察についても新たに同一遺構に属するセットと見做し得る作例の特定を進めた。 (3)の図像学的考察に関して、本年度はガンダーラにおける釈迦誕生の場面の形成について研究を進め、特にガンダーラで初めて具体的な注ぎ手を表すようになった釈迦誕生後の「灌水」の場面を取り上げて、図像の生成背景と、その特徴的な図像と対応する文献への影響関係を考察し、論文として発表した。文献比較では、初期大乗経典との関連性も指摘し、当地における仏教信仰形態の考察に向けても新たな視野を得ることができた(上枝いづみ「帝釈天と梵天が付き従う釈迦の誕生-ガンダーラの浮彫に表された「灌水」」と文献伝承との関係」(木俣元一・近本謙介編『宗教遺産テクスト学の創成』勉誠出版、2022年3月所収、45-62頁)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度も予定していた海外・国内調査を延期した。また、研究代表者の産休・育休による研究中断のため予定していた研究計画より一年半の遅れが生じ、あわせて研究発表が実施できなかったため。 しかしながら、(1)資料集成と地域毎の特徴の抽出、及び連関する(2)作例の全体構成の復元的研究に関しては当初の予定よりも早く情報を集積することができているため、資料集成の完成に向けては準備を整えたということができる。
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今後の研究の推進方策 |
研究再開後も海外での研究滞在は困難であることが予想されるが、関連機関との連携を一層深め、引き続き情報提供を受けつつ作例把握に努め、さらに再開後は国内所蔵の優れた作例に関する調査を積極的に行い、(1)の作例集成の完成を目指す。 関連する(2)に関しても、研究再開後の調査による情報を加えつつ、当時の仏伝浮彫の全体構成が再構築できる作例に関する成果の公表を目指す。(3)に関しては、ガンダーラに特徴的な釈迦前半生の諸場面について検討を行い、得られた成果を論文としてまとめ公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外・国内調査および研究滞在を感染症拡大のため中止したことと、代表者が産休・育休を取得したことにより、これらに関連する物品費についても次年度使用の必要が生じた。
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