| 研究課題/領域番号 |
19K13008
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| 研究機関 | 実践女子大学 |
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研究代表者 |
粂 和沙 実践女子大学, 文学部, 助教 (20634900)
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| 研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | ジャポニスム / ジェントルマンズ・クラブ / 受容史 / 来日画家 / 展覧会 |
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| 研究実績の概要 |
本研究の目的は、英国の日本美術愛好家の社交の場であったバーリントン・ファイン・アーツ・クラブに注目し、①クラブ主催の日本美術展、②日本美術を介した会員間の交遊、③紳士階級の男性たちによる日本美術受容の実態について調査検討を行なうことにある。2021年度は、「②日本美術を介した会員間の交遊」について調査研究を行なった。特に重点的に調査を行なったのが、水彩画家F.ディロンとその息子で大阪の造幣寮に勤めていたE.ディロンの日本滞在時の活動、さらに彼らが帰国後に同クラブで果たした役割についてである。2019年度に実施した調査で、ディロン父子が同クラブ主催の日本美術展で中心的な役割を果たしていたことが明らかとなった。だが、彼らが日本へ渡航した経緯、またF. ディロンの日本における制作活動について論じた研究はほぼなく、なぜ彼らが帰国後に日本美術愛好家として同クラブを牽引するに至ったのか、不明な点が多かった。そこで2021年度は、国内においてディロン父子の日本における足跡を調査した。また、彼らの活動については、The British News Paper Archive等のデジタル・アーカイヴも活用しながら、資料収集を行なった。こうした調査によって、F.ディロンがロンドンの画廊から派遣されるかたちで来日し、息子エドワードのもとに身を寄せて制作活動を行なっていたことや、ディロン父子の日本国内における人的ネットワークを明らかにした。また、帰国後に行われたF.ディロンの個展に対する美術批評から、この個展が契機となり、1870年代後半に継続的にディロン父子のコレクションを中心とした日本美術展が開催された様子も浮き彫りとなった。この調査研究成果の一部は、論文「フランク・ディロンと日本―19世紀末英国における訪日画家とその作品受容をめぐって」（『実践女子大学美學美術史學』36号）として報告した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2021年度は本研究課題の最終年度として、バーリントン・ファイン・アーツ・クラブ主催の日本美術展や会員のコレクションの傾向などから、紳士階級の男性たちの社交空間における日本美術受容のあり方を総括し、これまで申請者が取り組んできたミドルクラスの女性たちを主体とするジャポニスムとの比較検討を行なう予定であった。しかしながら、申請者の所属する実践女子大学では、パンデミックの影響で前年度に引き続き海外出張は制限されていたため、英国内における会員の日記や回顧録、書簡といった一次資料調査は実現できなかった。そこで本課題の研究期間を一年間延長し、2021年度は19世紀末に実際に日本に赴いた会員に焦点を当て、彼らの日本での足跡を京都府立図書館や横浜開港資料館等に保管されている資料やデジタル・アーカイヴから検討することとした。その結果、バーリントン・ファイン・アーツ・クラブの日本美術愛好家たちの中で中心的な役割を果たした画家のフランク・ディロンとその息子エドワードの日本滞在時の状況、そしてこの日本滞在時の活動が帰国後の同クラブの運営に少なからず影響を及ぼしていた様子を明らかにすることができた。こうした研究成果の一部は、上述した通り論文にまとめて公表済みである。とはいえ、日本国内では実施が困難な調査項目を保留し、研究期間を1年間延長したために本研究課題の総括には至らなかった。よって、本年度の研究についてはやや遅れていると言わざるを得ない。
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| 今後の研究の推進方策 |
紳士階級の男性を主体とするアート・クラブの日本美術受容の特徴(好まれた作家や主題の傾向など)を明らかにすべく、まずは、2019年度に実施した日本美術展に関する調査と、2020年度から2021年度にかけて実施した個々の会員に関する資料調査を総合的に検討したい。最終年度には、こうした調査を踏まえた上で、近代イギリス特有の「クラブ」という男性の社交空間におけるジャポニスムについて考察する。そして本研究の総括として、これまで申請者が取り組んできたミドルクラスの女性たちを主体とするジャポニスムとの比較検討を行なうことにより、ジャポニスムの受容史をジェンダー的観点から再構築することを目指す。2020年度以降パンデミックの影響により実施できなかった、英国内の研究機関における資料収集や作品調査を補完すべく、状況が許せば、大学の夏季休暇もしくは春季休暇の間に、少なくとも１週間から10日程度の現地調査を実施する。また引き続き、国内外の遠隔複写サービスやデジタル・アーカイヴも活用しながら、関連資料の渉猟および分析につとめたい。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、ロンドンのナショナル・アート・ライブラリー、大英図書館等で二週間程度の資料調査を予定していたが、前年度に引き続き、海外渡航制限により現地調査が行えなかったため次年度使用額が生じた。こうした繰越分は、2022年度に計画している海外出張費やジャポニスム関連文献の購入費用に充当したいと考えている。
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