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2021 年度 実施状況報告書

1910-1920年代イタリア美術のモダニズム再考:「秩序回帰」と純粋な造形性

研究課題

研究課題/領域番号 19K13014
研究機関青山学院大学

研究代表者

池野 絢子  青山学院大学, 文学部, 准教授 (80748393)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード前衛美術 / 秩序への回帰 / 未来派
研究実績の概要

今年度の研究実績は以下の二点である。
(1)ファシズム期の公共芸術
昨年度に引き続き、彫刻家アルトゥーロ・マルティーニの作品研究を進めるなかで、ファシズム期の公共芸術の機能が新たな問題として浮かび上がってきた。第一次世界大戦後のイタリアではリソルジメントの偉人像の伝統を継ぐ公共彫刻ブームが起きたが、時として作品の美的価値を軽視したこの流行に、当時イタリアでも否定的な議論があったことがわかった。その後、ファシスト政権はいかにして公共芸術を利用していったか、経緯について今後研究を進める必要がある。
(2)両大戦間期のイタリア芸術における時間概念の諸相
未来派の芸術家ボッチョーニのテクストを精読する過程で、彼が哲学者ベルクソンの思想を介して見出した相互浸透する運動表象は、時間経験の問題に深く根ざしていることがわかった。他方で、昨年度までの研究で明らかになったように、同時期にデ・キリコやカルロ・カッラといった形而上絵画の旗手たちは「近代」、「原始」、「古典」の概念の再解釈を提起している。これまでの研究において、20世紀前半のイタリア芸術はしばしば、この二陣営の対立という図式で捉えられてきた。しかし、以上のことから、同時代の芸術は過去から未来へと進んでいく直線的な時間概念の失効という前提を共有していたと仮定することが可能なのではないかと考えるに至った。この点は、イタリアにおけるモダニズムを再考することを目的とした本課題にとって、重要な論点になると考えられるため、次年度はこの仮説を個々の事例を通じて検証していきたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度も新型コロナウィルスの感染拡大によって、海外での資料調査を行うことができなかった。また、予定していた国内の美術館での資料調査も直前で断念せざるを得なかったため、全体として課題の進捗は遅れている。

今後の研究の推進方策

本年度は昨年度の状況に鑑みて国内での資料調査を計画していたが、新型コロナウィルスの感染拡大によって断念せざるを得なかった。現地でのアーカイヴ調査は引き続き困難な状況が予測されるため、現段階で入手できている重要テクストの精読や、国内で入手可能な情報の整理など、基礎研究を充実させることで対応したい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルスの感染拡大によって予定していた海外出張ができず、使用予定額と使用額に差が生じてしまった。次年度も海外出張は困難であると考えられるが、国内出張や研究会の実施に使用する計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 その他

すべて 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 20世紀初頭のイタリア芸術における複数の時間経験2021

    • 著者名/発表者名
      池野絢子
    • 学会等名
      「蜘蛛と箒」企画オンライン特別講座
    • 招待講演
  • [図書] 彫刻22021

    • 著者名/発表者名
      小田原のどか編(池野絢子「彫刻の二重の起源:一九二〇年代のアルトゥーロ・マルティーニ」)
    • 総ページ数
      603(pp.218-275)
    • 出版者
      書肆九十九
  • [備考] 【報告】 公開研究会「20世紀イタリアの芸術と文化」

    • URL

      https://www.repre.org/repre/vol42/topics/Ikeno/

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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