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2020 年度 実施状況報告書

日本陶磁における金銀彩の特殊性について

研究課題

研究課題/領域番号 19K13017
研究機関独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館

研究代表者

三笠 景子  独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 主任研究員 (80450641)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード障屏画 / 16世紀
研究実績の概要

まず、2019年度に得られた調査課題、陶磁器や漆工品以外まで視野を広げて、日本独自の金銀表現について研究を行うという目的を持ち、室町時代に顕著にみられる日月表現の絵画作品、さらにそこから桃山期にかけて展開していく障屏画に賦された金、もしくは金銀の彩色表現について注目した。
新型コロナウイルス感染対策のため、当初予定していた九州北部、関西における作品調査を十分に遂行することができなかったが、東京国立博物館において令和2年(2020)10月6日から11月29日(日)まで開催された特別展『桃山』の準備にあたり、目的の16~17世紀の障屏画に加え、漆工、刀剣、金工など、金彩、金銀彩の施された多岐にわたる作品を実見することができた。
とくに、平面である障屏画に対して賦された金彩、金銀彩は、おもに雲の表現において立体的、装飾的、かつ精緻に変化を見せる一方、金色が占める面積を広く拡大するために平面的に金箔を粗く施していくという展開もみせる。異なるようにみえるこれらは、ともに室内における視覚的効果を狙った点、素材の特質を最大限に工夫してダイナミックにみせる点で共通する。そして、これはのちの仁清、乾山の金銀彩にみられる賦彩の意識、陶器の素地の面、釉の表面の効果を意図して賦彩するという点に通じるものであり、少なくとも同時期の中国陶磁の金彩表現にはみられない特徴的な傾向とみえる。
今回の調査によって、「日本陶磁における金銀彩の特殊性」は、陶磁器に限らず、日本の美術工芸に共通する特質と考えるに至った。金や銀に対する意識のみならず、紙や布、木、土という身近に手にするさまざまな材質に対する日本人独特の感覚があり、それが美術作品の技法、表現に表れている。この点を今後理論的に整理したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初予定していた、金銀彩が賦された陶磁器の「網羅的調査」は新型コロナウイルスの蔓延に伴って遂行が困難な状態である。また、考察の対象を「17~18世紀以降にまで広げる」という目標は、今回おもに障屏画の展開を追うためにさかのぼって16~17世紀に注目したため、18世紀以降の考察に至っていない。
一方で、2020年度は考察対象を陶磁器のみならず、金銀彩が賦された絵画、工芸作品に広げて、じっさいに調査する機会を得たことで、新しい視点と成果、問題点を得ることができた。2019年度につづき、「より広範な考察」を試みるという点では、目的を達成することができたと考えている。

今後の研究の推進方策

金銀彩が施された作品の材質と、そこに賦された金銀彩の視覚的効果について、さらにそれを享受する受容(需要)層の変化などにも目を向けつつ整理し、さまざまな工芸作品を対象に、おもに17~18世紀以降の展開について考察を進める。可能な限り時機を逸せず、作品調査も遂行したい。

次年度使用額が生じた理由

当該年度は、新型コロナウイルス感染防止のため、当初予定していた調査へ出かけることがかなわなかったため、調査方針を変更し、新たに想定した絵画作品における金銀彩に関する必要資料を購入した。そのため、使用額に変更が生じた。

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公開日: 2021-12-27  

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