研究課題/領域番号 |
19K13018
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
米沢 玲 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化財情報資料部, 研究員 (80726993)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 羅漢 / 仏教美術 / 美術史 / 儀礼 / 日中交流史 |
研究実績の概要 |
本研究は中世日本における中国美術の受容について、造形作品の様式的側面とあわせて、その信仰背景における儀礼や安置空間を考証し、礼拝対象としての絵画あるいは彫刻の、宗教的意味や機能との関連性を考察するものである。考察の対象とするのは、中世(鎌倉~室町時代)に制作された羅漢(らかん)の造形作品である。羅漢信仰は中世に大陸からの影響を色濃く受けて日本国内でも隆盛し、絵画・彫刻など数多くの造形作品が制作された。それらの制作には大陸からもたらされた造形作品が大きく関わっていると考えられる。南宋時代の代表的な作例に、中世に日本へと伝えられた大徳寺伝来の五百羅漢図がある。本研究では、その図様を継承して制作されたと考えられる国内の作例の調査を行い、図様や様式の側面を検討し、さらにそれらの作例が制作された場において、どのような信仰の実態があったのかを考証する。本年度前半は国内外の作例に関する情報収集を行い、中世に制作された羅漢像の作例に関わる資料を蓄積、後半からは下記の現地調査を実施した。 1、江南地域における羅漢信仰の現地調査。大徳寺に伝来した五百羅漢図が制作された寧波を含む、中国・江南地域(江蘇省・浙江省)において羅漢の造形作品の現地調査を行った。 2、大分・羅漢寺の五百羅漢像の調査。大分県中津市に位置する羅漢寺において、南北朝時代に制作された石造五百羅漢像の調査を行った。 調査を通じて、中国・天台山を中心とした羅漢信仰の日本国内における受容のあり方が、造形作品の図像のみではなく、土地・景観を包括したものであることが確認できた。また、調査の成果を踏まえて東京文化財研究所オープンレクチャー、茶の湯文化学会にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度内に予定していた国内調査に替えて、次年度に実施予定だった海外調査を行った以外はおおむね順調に進んでいるが、年度末に行う予定だった文献調査は感染症対策による図書館・研究期間の閉鎖のため十分に遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に実施予定であった国内の作品調査に加えて文献資料の収集、また学会報告や論文等で成果の発表を行う。年度の前半は国内移動の自粛に伴って作品調査の実施が困難であるため後半での実施を予定しているが、今後の状況によっては更なる変更を見込んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
複数回を予定していた国内調査が次年度に繰り越しとなったため、協力者への謝礼・人件費をほとんど使用しなかった。次年度には人的協力を得ながら国内調査を進めていく予定だが、年度前半に予定していた調査はすでに実施が困難な状況であるため、調査予定や日数の変更を見込んでいる。
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