研究課題
若手研究
本研究では、中世日本における中国美術の受容という問題に羅漢の造形作品の調査を通じてアプローチを試みた。羅漢図の調査では、詳細な観察により図像が持つ意味や美術史的な位置づけを明らかにできたほか、図様が近いとされてきた複数の五百羅漢図の調査では図像の具体的な比較を行った。また、造形作品のみならず、羅漢が信仰されてきた寺院や地域のフィールドワークを行い、中世日本において羅漢信仰のあり方を土地や場という観点から考察した。
美術史
本研究の学術的な意義は、いくつかの羅漢図の詳細な観察を通じて、その美術史的な位置づけを明らかにしたことと、さらに信仰の場や安置場所の考察を行うことで中世日本の羅漢信仰を包括的に解明することを試みた点にある。大陸との往来が盛んになることによって隆盛した羅漢信仰は、単に文物が往来しただけではなく儀礼や安置空間・周辺環境といった情報も含めて伝来し形成されたものであり、その信仰の様相を探ることは中世寺院における日中交流の一端を解き明かすことにつながる。