研究課題/領域番号 |
19K13019
|
研究機関 | 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館 |
研究代表者 |
桝田 倫広 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 主任研究員 (70600881)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 現代美術 / 現代絵画 / 具象絵画 / 美術批評 / 多文化主義 / イギリス美術 / 近代美術 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルスの世界的な蔓延によって、当初、予定をしていた実地調査ができず、新規テーマについて十全な調査を行うことが難しい状況にあった。このため、2019年度、重点対象作家として設定していたイギリスの現代絵画を代表する作家のひとりであるピーター・ドイグの研究を続けた。彼の展覧会に際して刊行された展覧会カタログ、およびそこに収録された拙論文、および英語論文の翻訳、および作家のインタビューの翻訳については、2019年度中の実績としてすでに報告しているが、2020年度は上記のような情報の日本への提供を踏まえて、日本の研究者、批評家にさまざまな視点からピーター・ドイグについて論じてもらう機会の創出を行った。当初、それらはピーター・ドイグ展のレビューとして東京国立近代美術館のウェブサイトで発表されたが、その後「ピーター・ドイグ展の記録」という体裁によって、オンデマンド形式の冊子として頒布した。現在、東京国立近代美術館の機関レポジトリによる公開を準備している。 2020年度は査読付き論文、およびそれに準じる論文の発表を行うことはできなかったが、一般誌において研究の成果に基づく情報を広く提供することができた。『月刊美術』(2021年2月号)においては「こんにち、絵画をみることについて―ピーター・ドイグを起点に」と題し、ドイグ以降の現代の絵画のありようについて考察した。『芸術新潮』(2021年3月号)では、20世紀初頭から現代にかけてのイギリスの絵画史についての解説を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの世界的な蔓延によって、当初、予定をしていた実地調査ができず、十全な調査を行うことが難しい状況にある。今年度もきわめて不透明な状況にあるが、調査の方法、対象を変更しながら、国内での調査・研究でも可能なやり方を採用したいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年にはテートでガーナ移民の女性画家リネット・イアドム・ボアキエの個展が開催されるなど、イギリス国内において黒人画家の存在が広く印象付けられた年だと言えよう。90年代のドイグのデビュー以降、イギリス国内においては非白人の画家たちの躍進が目立つようになった。ドイグ自身はスコットランド出身の白人だが、彼の作風に見られる欧州以外の風景やモチーフは、欧米中心主義的な絵画の見方を逸脱するようなところがあり、その後、現代絵画においては当たり前のようになった多文化主義的な要素を先取りしている。ドイグ以後、イギリスで活躍する黒人画家、冒頭のボアキエをはじめ、クリス・オフィリ、ハーヴィン・アンダーソンなどに焦点を当て、イギリスの現代絵画における批評基準について考察を行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
科研費の申請時において予定をしていた海外での調査が、海外の渡航が著しく制限されている現状において、全くできていないこと、それに伴って日本では調達しづらい資料の購入がままならないことが主要因である。
|